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魅惑の昼下がり

「大丈夫? おっぱい揉む?」
 集中力が途切れた直後。脳が停止した瞬間に滑り込んでくる、その衝撃は大きい。背もたれが軋むほど仰け反った先、こちらを覗き込んでくるなまえの爆弾発言に、綴は危うく椅子から転げ落ちそうになった。あんぐりと開いた口を閉じて、努めて冷静に言葉を返す。
「……お前な、疲れてる人間にそういうこと言うなっつーの」
「いいじゃん別に、初めてでもなし」
「何回目とかそういう問題じゃなくて、もっと慎みってもんをだな――」
「でもちょっと期待したでしょ」
 ね? と小悪魔的に首を傾げて笑うなまえは、残念ながらこの上なく蠱惑的で、そして挑発的でもあった。するりと肩に伸びてくる手も、どこか艷やかに鎖骨をなぞってくる。負けた、と思った。
「あとで泣いても知らねーぞ」
「いいよお。最近構ってくれなくて淋しかったし、たまには綴くんもあたしに好き勝手してよ」
 屈んだままのなまえの手を引き寄せて、食らうように口づける。劇団員が帰ってくるまで、きっとそう長くはない。

20180518
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