優しい共通点
いわゆる穴場があると教えてくれたのはバイト先の先輩だった。春になると一面の黄色い花に囲まれるその丘は、知る人ぞ知るデートスポットであるらしい。デートという話はひとつ置いておくとしても、その花の名前を聞いて一番に頭に浮かんだ彼女を、絶対にここに連れてきたいと思ったのが先週のこと。そして、なんとか理由をつけてやってこれた今日、その選択は正解だったと確信する。
ふわりふわりと辺りを舞い上がる綿毛に囲まれる彼女はひどく絵になる光景で、叶うならこの瞬間を永遠にしておきたいと思ったほど。伏見さんに写真の撮り方を教わっておけばよかったと考えはしたが、それも後の祭りである。
「あたし、たんぽぽの花って大好きだよ。可愛いし、ほっとするし、綴くんみたいに優しい感じがするもん」
どうか、俺に向けられるこの笑顔だけは誰のものにもならないように――痛いくらいの願いを込めて、小さな体を抱きしめた。
20180515