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お前は黄色が似合うかな

「いったーるくん! これあげる!」
 仕事帰りの夕暮れのこと。聞き慣れた声に振り向く間もなく、俺はいわゆる膝カックンを受けてその場に倒れ込みそうになった。お前俺の運動神経ナメんなよ――なんて、外であるにも関わらず飛び出しそうになった悪態を飲み込み、やんわり注意しようとした矢先のこと。細い指が俺の耳をふわりと掠め、髪の隙間に何かをかけてみせた。何だこれ、と言った声は、自分が思うより何倍も間抜けだった。
「ガーベラだよ。ピンクのやつね、あそこの花屋のおじさんがくれたの。至くんに似合うと思ったからあげちゃう」
「……こういうの、普通は男がやるもんじゃね」
「まあそう言わずに」
 驚かせちゃってごめんね、なまえは満足気に微笑みながら俺の手を取って歩き出す。つんのめった拍子に耳から落ちた花を受け止めて一瞥、視線を下げた先にあるなまえの頭に乗せてみせた。

20180515
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