Fire Emblem

それはありふれた夜のこと

GL

「大丈夫。大丈夫よ、エメリナ。あなたには私がついてるわ」

 すう、すうと穏やかな寝息を立てる頬は月明かりに照らされている。ゆっくり手を触れたそれは青白いが、これでも再会したときに比べればよっぽど綺麗になったものだ。
 ――あのときは酷かった。死人のような、奴隷のような、思わず目を背けたくなるような姿になっていたのだから。
 もうあんな目には遭わせない。絶対に、あんな惨状には陥らせない。何故なら自分が、この人生すべてをかけて守っていくと決めたからだ。

「あなたには私がいる。私は、あなただけの騎士でいるから」

 だからもう、誰にだって触れさせはしない。彼女の矜持を、誇りを、意志を、誰にだって踏みにじらせたりするものか。
 フェリアの夜空に浮かぶ月に誓いを立てながら、ナマエは静かに目を閉じる。細く白いエメリナの手を、強く、固く握りしめて。


20200130

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