鬼さん、こちら(4/4)
「……けないで……」
その声にマルコは立ち止まる。
「ふざけないで!!!」
★はそう叫ぶとマルコの服を掴み自分へと引き寄せた。
キッとマルコを睨む★。
そして壁際にマルコを突き飛ばした。
「もう逃がしませんから」
そう言って★はマルコへと近づいた。
「ちゃんと終わりにしてください。せめてきちんと向き合ってください。逃げないでください。マルコ隊長がきちんと私の恋を終わらせてくれるなら……私は受け止めます。だから……」
★の言葉にマルコはため息をついた。
呆れている、そう思った★は泣きそうになった。
ガキで、自分勝手で、大人な恋の駆け引きも知らない。
そんな子どもにマルコ隊長がうんざりしている……。
「わかりました、もう……いいです。それが答えなら。私はもうマルコ隊長の事は諦めます。でも覚えててください」
★はマルコの目を見る。
しっかり焼き付ける。
いざとなると、目をそらしたくなって
勇気が出なくて自分で情けなくなる。
でも、ここで負けるわけにはいかない。
自分の為にも、今まで頑張ってきた恋に背を向けちゃいけない。
「私は、マルコ隊長が好きです。本気で、好きになったんです。なかったことにだけはしないでください。こんなにも好きになったことは私の誇りです」
そういうと、★の体はふわりと、一瞬浮いた。
「……マルコ隊長?」
「反則だろい」
気付いたら、抱きしめられていた。
「俺なんか諦めて、さっさと自分に見合ったやつ見つければよかったのになァ」
「そんなこと……!!」
「逃げてたわけじゃないんだよい」
「え?」
「逃がしてやってたんだろい。俺はお前の思うような大人なやつじゃねェし、お前は若い。もっといいやつがいるよい」
その言葉に★はマルコをギュッと抱きしめた。
「そんなのいませんよ!私は、マルコ隊長が……!」
「今だけだよい。だから諦めるまで待っててやったのに……」
「何言って……」
「もう、俺が限界だよい。物わかりのいい大人のフリはやめだ。★……覚悟しろい」
はい、と★が応えるとマルコは★にキスをした。
恋は一瞬にして火がついて、徐々に消えてなくなる。
自分の気持ちも、★の気持ちも、きっとすぐに消えていく。
ただの憧れなら、近づきすぎないほうがいい。
マルコはそう思っていた。
でも傷つけたくなくて、
逃げて逃げて……
逃がす時間を与えて
それでも追いかける★を愛しいと思って
悪知恵の働く大人はそんなことで愛を確かめて……
こんなことするやつ、やめておいたほうが★の為だ、と思うのに
結局、逃がしてやれなかった。
「★、好きだよい」
初めてマルコは★を見た。
その表情に★は泣いた。
幸せでいっぱいになった。
どうなるかなんてわからない。
でも今の自分に嘘をついて、傷つくのを恐れてたら
何も始まらない。
おいかけておいかけて
捕まえた愛は
今、この瞬間、世界一幸せな時をくれた。
end
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