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鬼さん、こちら(2/4)


「ねぇエース、私……マルコ隊長に相手にされてないのかな?」

いつになくシュンとしている★に気も使わず

「そうだろうな」

と正直に言うエース。

「恋する乙女心をもうちょっといたわりなさいよ」

「あんだけスルーされといて相手されてるって思うほうがおかしいだろ」

それはもっともだけど言葉にされると痛い。

ものすごく。

★は泣くのをグッと堪える。

「……にしたってハッキリ断られてもいねェんだろ?」

「そうなんだよね。スルーされるんだけど、はっきり拒否はされない。だから……ちょっとは期待しちゃうじゃん」

ミジンコくらいはな、とエースが言うと★は思いっきり睨んだ。

「わっかんねェよなーマルコも。俺にはお前のその打たれ強さもわかんねェけど。諦めねェの?」

「諦められないよ……」

ふーん、とさも興味がなさそうにエースは言う。

「でも、そういうとこ……一応尊敬してやる」

「エース……」

「そんだけマルコが好きなんだろ?中途半端に終わらせたくねェもんな!」

ニカッと笑ったエースにつられて★も笑う。

「なかったことにだけはしてほしくないからさ。ちゃんと受け止めてもらってそれで断られてもいいんだ。私が本当に好きっていうのはわかってもらいたい!」

うまれて初めてこんなに人を好きになった。

恋だってしてきたけど……臆病な自分が勝ってきて、いつも心にしまってきた。

自分がこんなに積極的だなんて知らなかった。

傷つくのが怖くて自分からは何もできなかった私と初めてサヨナラできた恋。

絶対に、欲しいと思ってしまった人。

「ま、頑張れよ!」

なんだかんだ言って応援してくれるエースに★は心から感謝した。

偽りの慰めじゃなく、本当の言葉をくれる。

向き合ってくれるまで


頑張ろう。



そう思ってた矢先、その出来事は起こった。

「今日はマルコ隊長に全然会えなかったなぁ……」

桁違いの船員の多さと船の広さ。

会おうと努力してるから会う日は多いものの会えない日だってある。

そんな日は★は決まって悪あがきをしてしまう。

マルコが部屋からでてくるんじゃないか、そう期待してマルコの部屋のあたりをうろちょろしてしまう。

「……さすがにここまできたらストーカーだよね」

諦めようと自分の部屋へ足を向けると


「……マ……マルコたいっ……」

諦めないでよかった!

一目でも会えた!

マルコを見つけてパァっと笑顔になる★をどん底に突き落とした影。

今までピッタリと重なっていた影が2つに別れていく。

一瞬目が合った気がした。

でもそれはすぐ、腕の中にいる女の人にうつり

それからはマルコ隊長を見れずに足音だけ聞いていた。

同じ方向に進んでいく足音。

パタン、と閉まるドアの音を聞く前に★は足早に……そしていつの間にか駆け足でその場を去った。

流れている涙を、誰にも見られたくなかった。


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