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泣かないと決めていた。

エース隊長を好きになってから

それを受け入れて、諦めることをしないと決めてから

私が泣くのは違うと思っていたから。

受け入れ態勢にない隊長に好きだと全身で伝えるようになってからは特に。

泣いたらきっと彼を傷つけることにもなると勝手にそう思っていた。

知らないところで泣いたとしても、なんだか彼を悪者にしてるようでこわかった。




「キスマークはつけんなって言ったろ」

「いいじゃない、虫よけよ」

エース隊長とナースさんの声がする。

今日はあの人と、だったのか。

女の私でも惚れ惚れするようなスタイルと美貌。

おまけに声もセクシーだ。

こういう時は心を無にする。

それか冷静に保つ。

けっして乱されないように、感情を出さないように。

「虫よけって……おまえなぁ」

「あら、いるじゃない。飛び回ってる虫が」

しばらくの沈黙。

あぁ、私のことか、と気が付いたのはその沈黙がしばらくたってから。

「はっきりしたらいいじゃない。優しいのはわかるけど」

ここにいちゃいけない。

そう思った。

急に感情が取り戻される。

ダメだ、いけない。

頭の中で繰り返されるのに動けない。

「あの子も、かわいそうよ?」

ナースさんの声にエース隊長は……

「そう……だよな……」

そう答えた。

かわいそう?

私が?

そう思った瞬間に、もう止められなくなっていた。

口を手で押さえて力を込める。

言うことをきかない体を動かすと何かにひっかかりそれはカランと音を立てた。

誰かが飲んだ酒ビン。

あっ、と思うのが先か

2人と目が合うのが先か

私は一瞬止まって全力で逃げた。

泣いてしまった。

泣かないと決めてたのに。

傷つけてしまった。

彼が優しい事は知っていた。

だから優しく拒絶されていた。

それに甘えて好きでいたのは私なのに。

私は泣くことをしちゃいけないのに。

一度泣いてしまうと止まらない涙に

私はまだ、必死で

泣き止め、泣くな

と命令していた。

まったく言うことを聞いてくれない涙は

とめどなく、流れた。

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