10000Hit記念 | ナノ

3



夢……?

いや、でも確かに……

近くにエース隊長の存在があった。

息をのむほどに近くに居た。

唇が触れた………

頭が真っ白になっていろんなものがグルグルと回っていた。

手の届かない場所に居た人が。

触れていた唇に私はそっと掌を押し付けた。

感触が蘇って、火が出るほど熱くなった。



どういう意味なんだろう?

あれはどういう……

「★、★?」

「あ、イ、イゾウ隊長!」

隊長に話しかけられるなんて今日もまたすごくラッキーな日だ。

「ボーっとして大丈夫か?」

「あ、すすす、すみません!!」

ラッキーなんて思ってる場合じゃなかった!

深くお辞儀をした私の上から笑い声が聞こえた。

「具合でも悪いんじゃないかと思っただけだから気にするな」

頭をポンと叩かれる。

昨日から私の運勢は今まで生きてきた中で一番の運を使い果たしてるんじゃないだろうか?

真っ赤になった姿を見られまいとそこから動けなくなった。

「体調悪いならちゃんと休めよ」

イゾウ隊長が去った後私は自分の頭に手を置いて、また真っ赤になった。

自分の人生にあるかないかの出来事だ。

噛みしめないと……

そう思っているとふと、見た先にエース隊長がいた。

目が合う。

昨日の事を思い出して、固まってしまった私を

エース隊長は………

昨日見た表情は夢だと思うくらい、冷たい目で、見て

そして、そらした。


ズキン、



痛む心に私はまた、動けなくなった。




迷惑だったんだろうか?

あのキ、キスを怒ってるんだろうか?

いや、でもエース隊長が……

あ、エース隊長酔っぱらってた。

誰かと間違ってたり………?

心臓が重く鳴る。

きっとそうだ、それか気の迷いだ。

私なんかにエース隊長がキ、キスなんてするはずない。

「なーんだ……」

笑いが込み上げてきた。


昨夜見た夢はすべて消え去った。

ダメだ、と思ってもどうしても描いてしまった夢。


エース隊長と、いろんな話をして

手を繋いで、

そしてまた……キスをして。

夢物語が一瞬だけ希望を抱いてしまった。



舞い上がって、……馬鹿みたい。



私は部屋に向かった。

そして泣いた。




どうせなら、夢のままでいたかった。

少しでも現実味を帯びてしまったその夢は

痛くて痛くて………

いくら涙を流しても

消えてはくれなかった。

prev / next
[Top]

「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -