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「ここでいいんだな?」
「あ、ハイ。ありがとうございます」
酒樽をわかるところにおけばきっとみんな自分でだって取りにこれるだろう。
でも、この様子じゃもう一個必要だなぁ……
「エース隊長こんなとこにいたんですかぁ?」
「おぉ!酒足りなくてよ!」
「早く戻ってきてくださいねぇ?」
さっきエース隊長を取り囲んでいたナース達がエース隊長に絡みつく。
お似合い、だなぁ。
「★、あとは?」
「へ?」
「なんか手伝う事ねェのか?」
いつの間にかナース達はいなくなっていた。
酒樽、もう一個必要だけど……
「大丈夫です!ありがとうございました!」
そう言って私はペコリと頭を下げると食糧庫へ向かった。
あの場所に、私は必要ない。
そう思った途端またなんだか暗い気持ちになった。
「ダメだ……」
エース隊長と話せたんだから、それで充分。
欲張りになっちゃいけない。
いい日じゃないか!今日は。
と気合を入れなおす。
そして目の前にある物体を見つめる。
「……どうしようか」
1人で運べる大きさじゃない酒樽。
いや、でも私だって……!
そう意を決して持ち上げてみる。
……ビクともしない。
「キャッ!!」
力を抜いた途端何故か蓋が開いていた酒樽からお酒が飛び出てきた。
誰かきっと盗み酒していたに違いない。
「……あーあ、お前何やってんだよ」
「エエエエエース隊長!?」
だから“エ”の数多いって、と笑いながら近づいてくるエース隊長。
今日の運勢はきっと1位だったに違いない。
こんなにエース隊長と話せるなんて夢みたいだ。
「お前さ」
「へ?」
「1人で頑張るなよ?」
撫でられた頭に神経が集中してもう何も考えられなくなった。
「★……」
その言葉と一緒に振ってきたのは
優しい口づけだった。
「これ、持ってくな!」
そう言ってエース隊長は酒樽を運んで食糧庫を後にした。
「う……うそぉ」
私はその場にへたり込んだ。
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