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今日は宴。

雑用係の私は大忙し。

お父さんがこの船に私を乗せてくれた時から何かしなきゃ、といろいろやってみたけど雑用係ということになった。

「酒が足りねェぞー」

「い、今持っていきます!」

普段大声なんて出さないので変な声がでてしまった。

お酒を持ってこようと早足で歩くとそこには楽しそうな輪。

「んでよー弟がよー」

「エース隊長ってば酔っぱらってるの?」

「んー?」

「その話、前も聞いたわよ?」

エース隊長がナースやら隊員やらに囲まれている。

「わりぃわりぃ……今日はすっげェ気分いいからよ!酔っぱらった」

あぁ、本当に酔っぱらっちゃってる。

親父のマークがデカデカと描かれている背中がほんのり赤い。

大丈夫かな?

少し薄めたお酒、持って行った方がいいかな?

でも……

「本当に楽しそう」

やんちゃなのかと思えば、すごく生真面目で

かと思えば結構めんどくさがりで……

そんなエース隊長を気づけばいつも目で追っていた。

自分の嫌なことでさえも吹き飛ばしてくれそうな笑顔に私は心奪われた。

「おーい!酒まだかぁ!」

「す、すみません!」

しまった、見とれてた!

私はキッチンへと急いだ。

「えぇーっと……あれ、食糧庫行かないとないかな」

宴の準備でたんまり用意しておいたお酒がもうない。

うちの船の人は本当によく飲むなぁ……

あまりお酒も飲めない私は結構羨ましかったりする。

あんな風にみんなと話してみたい。

でも私は誰かを楽しませる話なんてできないし。

食糧庫に着くとやけに静かで薄暗かった。

あんなに賑やかだったのに……こっちのほうが落ち着くなんて……

「ハァ……」

なんか落ち込んできた。

「なんだァ?辛気臭ェため息なんかして」

「エエエエエース隊長!」

“エ”の数多いだろ、と笑いながらエース隊長がやってきた。

どうしてここへ!?

ナースさんたちは!?

聞きたいことはたくさんあるけど言葉がでてこない。

「それ、運べばいいのか?」

「え?あ、はい。でも……」

「一人で持てねェだろ?」

酒樽を持ってくれるエース隊長。

エース隊長は優しい。

誰にでも。

こんな私にも気を使っていろいろ話しかけたりしてくれる。

「楽しくやろうぜ!★!」

な、名前!

名前覚えててくれたんだ!!

私はそれだけで嬉しくなる。

今日はいい夢が見れそうだなぁ……

「ほら、★!持ってくぞ!」

「あ、ハイ!!」

私はエース隊長の後をついて行った。

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