臆病者の恋愛ごっこ(4/4)
「★……★……」
「私が何したのよ……放っておけばよかったじゃない。自然消滅で、それでいいじゃない」
「わるかった、★……」
「今更何!?ずっと平気な顔して……今更人に盗られんのが嫌ってバカにしてる!!」
ダメだった。
今まで、ずっとため込んできた思いが溢れる。
「そもそも別れてるんじゃないの?これ。なのに責めるとか、できないし!もう愛情がないからわかれよってことじゃなかったの!?」
「んなことねーよ!お前、なんも言わねェから……お前こそ、もう俺の事好きじゃねェから関心ねェんじゃねェのかよ!んでサッチんとこ……!」
「好きじゃないなら別れてる!!!」
あぁ、言ってしまった。
ずっと、奥にしまいこんできた思い。
自分の中でも本当は好きじゃなくなったんだ、とそうだと思い込んでいた……いや、思い込もうとしていた想いが溢れてしまった。
「本当は……すごく辛くて、辛くて……でも、嫌われたくなくて……傷つきたくなくて、何もないフリしてた……」
慣れた、なんて嘘だ。
エースが浮気を繰り返すたびに壊れていく心。
何も感じないようにすればいい。
関心のないフリをして自分を守らなければ、自分が自分じゃなくなりそうで怖かった。
何よりも怖かったのは、形だけでも恋人という関係がなくなる事。
しがみついていた。
自分に嘘ついてまで、エースの恋人でいたかった。
それくらい、愛してしまっていた。
「本当は、俺の事好きじゃねェんだと思ってた」
ごめん、ごめん、と何度も謝るエース。
「告白したのも俺。誘うのも俺。サッチには感情見せんのに、俺には見せてくんなくて、自信……なくなってたんだ」
ヒック、ヒックとようやく落ち着いてきた★に戸惑いながら慎重に話すエース。
「だから、きっと★は俺の事振るつもりなんだろって思って、サッチんとこ行くんだって思ったら……じゃぁ俺も他の奴とって……」
エースの腕に力が入る。
「その時も、お前何もなかったことにしてるから。あぁ、興味ねェんだなって思って……お前抱いても辛そうにしてるし。サッチ以外のやつに抱かれんのそんなに嫌かよって」
エースも★と同じ。
傷つくのが嫌で、自分を守って……
それでも★の恋人でいたかった。
だから別れを言えなかった。
サッチにとられたくないのに、自分の心を誤魔化すことしかできなかった。
「……嫌われたくなかった。どうしていいかわかんなかった。だって、夢みたいで……壊れないように、必死だった」
★は大粒の涙を流しながらエースの体に腕を回した。
「ごめん、傷つけて……臆病で、ごめん。愛してんだ。今更って思うかもしんねェけど。★のこと、離したくねェんだよ」
ギュッと抱きしめる。
★も腕に力を入れた。
「私も、不器用で…ごめん。不安にさせてたなんて知らなくて、サッチに逃げてたのかもしれない。ごめん……」
エースは抱きしめる腕を離した。
そして、今までにないくらい重い心臓の音を抑えるかのように力を入れた。
「★……、もう一回、俺と………付き合ってくれるか?」
目をそらしたい気持ちをグッと堪え、★に向き合う。
もう、逃げない。
もし、ダメだとしても……
「これからは、不安とか、気持ちとか……ちゃんと言えるように努力するね?」
そう言って笑った★は、世界一、綺麗で可愛かった。
コツンとおでこを合わせる2人。
笑い合ってキスをする。
随分、遠回りしてきたように思う。
好きで、好きで……好きすぎて
失うことしか頭になかった恋を
今度は、2人でずっと一緒にいるために
2人で、共に歩んで行こうと心に決めた。
キミといる未来を、もう諦めないと誓った──
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