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臆病者の恋愛ごっこ(2/4)


サッチと別れ、自室に戻ろうと歩いていると向こうから今朝見たきりの恋人が歩いてきた。

必然的に目が合うが★は無表情でそれをとらえた。

エースもまた同じ。

言葉も掛けずすれ違う。

やっぱり、これは自然消滅していたのか。

「★」

すれ違いざまにふいに呼び掛けられる。

「……なに?」

「用、あったんじゃねェの?」

「え?」

用があるような顔をしてただろうか?

「今朝、きてたろ。部屋」

必要最低限の単語が並んでいる。

「あぁ……サッチに頼まれて。ごめん、そっち、いるから声かけて」

めんどくせェ、とエースの声が聞こえた。

「自分でくればいいじゃねェか」

ボソっと言ったのが聞こえた。

「ごめんね、忙しかったのよ、サッチ」

チッと舌打ちする音が聞こえる。

「…なんでお前が謝るんだよ」

「……いや、なんとなく」

なぜか苛立ってるエース。

そんなオーラが取り巻いている。

「じゃぁ、私はこれで」

イライラしている人間のそばにいてもろくなことはない。

早々に立ち去ろうとしたがまたもエースに呼び止められた。

「なに?」

「いや……なんの用って?」

「さぁ?呼んできてくれって言われただけだから。書類がどうとかは言ってたけど」

「そんな朝早い時間から一緒にいるんだな」

「そりゃぁ、朝食の用意してたから」

へぇ、と興味のなさそうな返事をするエース。

今度は何も告げずに立ち去った。


浮気をしていてそれがバレていると知っててよく言う。

万が一、サッチと夜を共にしてサッチと朝を迎えていたってエースには何も言う権利はないはずだ。

久しぶりに交わした会話がコレ。

浮気を弁解するわけでもなく、エースが何故か苛立って会話が進む。

だんだん腹が立ってきた。

怒りを鎮めるために立ち止まって海を眺める。

海のように荒立つ波もすべてを受け止めれたらいいのに。


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