プレゼントは君(1/2)
【サンジ誕生日記念小説】
今日も船のコックさんは忙しく働いている。
いいんだろうか?
と内心ハラハラしながら私はそれを見ていた。
「あ、もうちょっと待ってね?もう少しでサンジ特製★ちゃんスペシャルランチができるから」
「え?あ、いや……ぜんっぜん急いでないから!」
むしろそんなに忙しくしないでください。
「そうなの?」
なぜかシュンとしたサンジくんに、ランチが楽しみじゃないと思われたと理解し私はすかさず訂正した。
「すっごいいい匂いでホント、すぐにでも食べたいくらいなんだけどね!でも……」
「よっしゃ!★ちゃんの為ならすぐさまこのサンジ、美味しいランチ作るからねぇ〜ン!」
目が燃えたりハートになったりしてさっきの2倍は忙しく動き回るサンジくん。
やってしまった。
今日くらい休んでてもいいのに。
「……サンジくん、手伝う」
「いいよ、★ちゃん座ってて?」
「……手伝う」
サンジくんは苦笑いをした後ため息にも似た息を吐いた。
「じゃぁ、テーブル拭いていただけますか?」
私は、うん。と返事をしてテーブルを拭いた。
「次は?」
「もういいって」
「邪魔はしないから」
「邪魔なんて!!」
とんでもない!なんちゃらかんちゃらと私を褒める言葉がでてきたけど長くなりそうなのでいったん止めておこう。
「サンジくんの手伝いがしたいの。・・・…ダメ?」
必殺上目使い。
私なんかのでもやられた振りをしてくれるサンジくん。
隣に立って材料なんかを運ぶ。
水仕事や重いものを持たせないのがサンジくんらしい。
やっぱり邪魔してるんじゃないんだろうか?
「★ちゃん」
「ん?」
「どうしたの?今日」
「え?」
サンジくんは何とも言えない困った顔をする。
「だって、ほら。ずっとランチの支度待っててくれるし、手伝ってくれたりさ。なんか用だった?」
言葉選びがなんとも紳士なサンジくんらしい。
「用……ってほどのことじゃないんだけどね」
なんだかみんなそういう素振りを全然見せないから私だけ変に考え込んでいるのが恥ずかしくて私も言葉を選ぶ。
だって、好きなのがバレバレになっちゃう。
「ほら、今日くらいゆっくりしててもいいんじゃないかなぁって」
「今日?」
本人すら忘れていることなのに私が覚えているっていうのもなんだか照れくさくて黙ってしまう。
「……ん?あぁ!!!」
思い出したと同時にビックリするサンジくん。
「★ちゃん……それで!?」
「あ、えーっと……まぁ、うん」
「★ちゃん、クソ嬉しいよ!君はなんて(以下略)」
落ち着け、と思うのに顔が赤いのが自分でもわかる。
ずっと考えていた。
サンジくんのために何ができるだろう?
何があげれるだろう?
結局、答えは思い浮かばず今日まできてしまった。
「ありがとう、★ちゃん」
「どういたしまして」
外ではみんなの声が聞こえる。
何も変わらない日常。
「すっかり忘れてたよ。誕生日なんてさ」
「わ、私も……だからプレゼントとかなくてさ。せめて手伝いでもーとか……」
咄嗟に思い浮かんだ言い訳を言ってみる。
我ながらよくできた言い訳だ。
「その気持ちだけで充分さ。★ちゃんが美味しそうに俺の料理食べてくれたら、それだけでプレゼントだよ」
ニカッと笑って言うサンジくんがかっこよくて私はまた真っ赤になった。
「なーんもいらねぇのさ。★ちゃんがいてくれれば、な」
声色はいつもと違う。
言葉は一緒なのに低い声で言われるとどうしていいかわからなくなる。
「ちょっとは期待してもいいんだよな?」
「へ?」
今日のサンジくんはいつもと違う。
本当に、サンジくんなのか?!と思うほど……かっこよくて、ずるい。
「プレゼントいただいてよろしいでしょうか?プリンセス」
「プレゼント?」
「あぁ、俺が一番欲しいもの、いただいても?」
なんなんだろう?と考えてる間に目の前にサンジくんの顔が近づいてきた。
「プレゼントは君。でどう?」
私は真っ赤になって頷いた。
「誕生日おめでとう。生まれてきてくれてありがとう」
「ありがとう。君に出会えた奇跡をクソ大切にするよ」
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