愛、見つけた(9/9)
「★?いるか?」
返事はない。
「……開けて……くれねェ…か」
顔も見たくない、なんて言われたらそれこそ立ち直れねェ。
エースはドアの前で話を続けた。
「謝りに来たんだ……。悪かった」
シーンと静まり返る空間。
そこにいるはずなのに、返ってこないのがこんなに不安なのかとエースは改めて実感する。
「お前が飯用意してくれてねェと、俺の飯が半分だ。どこ座ったらいいのかわかんねェ。それと洗濯物も誰のかわかんねェ」
自分が何を言っているのか、わからなかったがとにかくエースは言葉を繋げた。
「今日のデザート、お前の好物だったんだぞ。サッチが残念がってた。あと、みんなも熱があっても食事には来るのにどうしたんだって大騒ぎだ」
肝心な事がでてこない。
言葉を選んでいるようで選んだ結果がこれか、とエースは自分に呆れてしまう。
「ダイエット、なんて嘘なんだろ?……昨日俺はお前を傷つけることしたんだよな?」
黙って部屋の中で聞いていた★がかすかに動いた。
「お前が理由もなしにあんな風になるわけなかったんだ。俺も頭に血がのぼってて……ごめん」
★はゆっくりと歩き出した。
「お前が許してくれるまで何度でも謝る。お前はよくやってくれてる。お前がいないと2番隊はダメ、なんだよ……」
エースの目の前のドアが開いた。
「そんなこと……ないですよ」
「そんなことなくねェ」
あぁ、やっぱり★は……
ずっと不安だったんだ。
「俺も、お前がいなきゃダメだ」
「え?」
「腹減って死にそう……」
★が笑った。
エースは思わず★を抱きしめていた。
「悪かった。昼飯は、一緒に食おう……な?」
「……は、はい」
エースは自分が★を抱きしめているのに気づき、わりぃ!!と手を離し頬を指で掻いた。
「行こうぜ」
「あ、でももう大盛りはできませんよ?」
「いーって、大丈夫!!」
そう言って2人は食堂に向った。
快気祝いとコックが★に大盛りにする食事。
それに加え他のクルー達が具合を心配して皿に山盛りの食事を置いていった。
好きだ、と言っていた今朝のデザートを残していたクルーもいて★は思わず泣きそうになった。
「★さん!!!大丈夫なんですか!?」
泣きそうな顔をしたミントが★に駆け寄る。
「うん、もう大丈夫だよ!!」
まだちょっと心が痛いけど、でもミントさんともきっと笑顔でいれる。
★はそう思った。
「よかったぁ……心配したんですよ」
「ありがとう」
本当にいい子だ。
私には出来ない、素直になることを知っている。
エース隊長が惹かれるのもわかる。
だから、もう苦しくない。
大丈夫。
私は私の方法で、一歩づつ進むって決めたんだから。
「ごめんね?心配かけて。エース隊長から聞いたの。ありがとう、ちゃんと見ててくれて」
その言葉にエースは苦笑した。
でも、嬉しかった。
そう言える★がエースは嬉しかった。
「★さんのことは見ちゃうんですよね。いつもたくさんの仕事こなしてるので私も頑張らなくちゃ!!って」
笑顔で言うミントさんに私の心は痛くなった。
勝手に嫉妬して、嫌いになりそうになっていたのが本当に申し訳ない。
それから、みんなでご飯を食べて笑った。
なかなか私は自分のことを言わない、という事で質問攻めにあったりした。
「エース隊長」
「ん?」
「ありがとうございます」
エースは苦笑していた。
隊長失格の自分。
許してくれないかも、とは思っていたのに感謝されるとは思ってもみなかった。
「一番欲しかったもの、見つけた気がするんです」
「欲しかったもの?」
「はい、それを……一番にくれたのが隊長だったから」
私の居場所、私のいる意味、大きな愛。
どれもこれも、エースがいてくれたから与えられたもの。
「よくわかんねーけど……俺は何もしてねェだろ」
「そんなことないです。これからも、よろしくお願いしますね。隊長」
今度は自分から一歩踏み出そうと思う。
「お?おぉ!!」
「覚悟してくださいね?」
「お?おぉ?」
一人ぼっちだと思ってた。
でも、そんなことなかった。
自分をわかろうとしてくれる人がいる。
何よりもかけがえのない……
愛、見つけた。
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