愛、見つけた(8/9)
エースの目にとまったのはマルコに怒られている2番隊の隊員の姿。
「どうしたんだ?マルコ。こいつら何か……」
「昨日の頼んだ洗濯物の中に知らねェもんがいっぱい紛れ込んでるんだよい。しかも昨日のうちに終わってねェ。」
「すいません!!★がいねェと誰のかわかんなくて……」
「そういうことかよい」
マルコはため息をついて肩を落とした。
「いつもきちんとしてあるからサボってたのかと思ってたよい」
隊員はすみません、と謝ったあと洗濯の続きをしに行った。
「あいつがいねェと2番隊もしまらねェな」
「……しらなかった。あいつ、そんな細けェ事まで知ってたんだな…。隊長失格だよな、俺」
「なんでそう思うんだよい」
マルコはうつむきながらしゃがみこむエースの隣に腰を下ろした。
「あいつが、理由もなしにあんな事言う訳なかったんだ」
「あぁ」
「それなのに、俺は一方的に酷いこと言っちまった」
「そうか……」
ただ、淡々と話すエースにジッと耳を傾けるマルコ。
「考えても考えても、理由がわからねェ」
★のことを考えてみた。
いつも隣でニコニコと食事をしている姿しか浮かんでこなかった。
「ただ、ちょっと前からあいつ、飯半分しか手ェつけてねェんだよ。ダイエット、とか言ってたけど」
「ダイエット……ねェい」
「あいつからのサインだったのかもしれねェ。なのに俺は全然気にも止めなかった」
ミントが痩せてるから自分も影響されて、と言っていたのを思い出す。
そう言えば、あいつが飯に手をつけなくなったのはミントが来てからだ。
「あいつがうちに来た時のこと、覚えてるかよい?」
「……あぁ」
「人見知りが激しくて、苦労したよい」
眉を八の字にしてマルコは笑った。
「それをお前が2番隊で面倒見るって言った時、俺はこいつならきっと★をなんとかしてくれるって思ったんだよい」
それを聞くとエースはいたたまれなくなり拳をギュッと握った。
「お前はよくやってくれたよい。あいつはお前になついてたかなァ」
「……そんなこと……」
「ミントを2番隊の専属に、って言った時も、★のためを思ってだろい?」
マルコは全てお見通しなんだな、とエースは思った。
なかなか船に馴染めない★も女がそばに入れば何かと気兼ねがなくなるんじゃないかと思った。
それに、俺がそうだったように★も世話が焼ける存在が入ってくれば気が紛れるんじゃねーか、とも。
結局、世話やく暇もなくミントはこの船にあっという間に馴染んでいったけど。
「お前が部屋に戻ったあとサッチが俺んとこ来てたんだよい」
「サッチが?」
「エースの飯の用意してる時、★が言ってたらしいよい。“私はこれくらいしかできませんから”ってな」
その言葉にエースは胸を締め付けられた。
「あまりに寂しそうだったから気になったって言ってたよい。それに、昨日はエースと飯食ってなかったから喧嘩でもしたのかってな」
そうだ、昨日……俺はせっかく席をとってくれた★に何も言わねェでミント達のところへ行った。
一人ぼっちにして置いていった。
食事を全部置いていったのがそのせいだとしたら……?
エースは頭の中の★の行動一つ一つを整理していく。
「★はミントのようにうまくやれねェよい」
そう言われた瞬間に全てのパズルがつながった気がした。
「マルコ……」
「ん?」
「さんきゅーな」
エースはそう言って立ち上がった。
謝らなきゃいけねェ。
★にきちんと謝って許してもらわないといけねェ。
エースは★の部屋に向かって歩いた。
船に馴染めずに不安だった★、それを支えてきたつもりだった。
徐々に他のやつとも話すようになっていって、いつしかさほど気にすることはなくなった。
その間中、★はずっともがいて、
なのに新入りのミントにみんな神経がいっちまって、
いつの間にかミントはみんなの人気者になっていて……
その事が★のことをますます不安にさせていったのなら………
昨日の俺の行動は、きっと★を傷つけるには十分だったはずだ。
一人ぼっち。
置いてきたんだから。
そして………
ミントの好物は知っている。
でも、★の好物は知らない。
ミントの仕事は知っていてそれを誰もが褒めている。
でも、★の仕事を褒めるやつはいない。
そんな風にされたら誰だって……
エースは深く息を吐くと★の部屋の前に立った。
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