短編 | ナノ

愛、見つけた(6/9)








「★?」

今は会いたくない

いつも会いたくてたまらない人の声がした。

「入るぞ?」

「すみません、エース隊長……寝かせてください」

「具合悪いのか?」

私は何も言えなかった。

具合が悪いと言えばきっと……

「ミント連れてくるか?」

「っ……!!いいです!!寝てれば治ります!!」

エース隊長の口からミントさんの名前を聞くだけで今は苦しい。

「……とにかく入るぞ」

ベットに潜り込んでいる★を見てエースはため息をついた。

「やっぱり具合悪いんじゃねーのか?」

「そんなこと……」

「でも食事、全部残してたろ?」

気づいてて……くれたんだ!!

★はパァっと明るくなる。

「ミントが見てたんだ。なんで残したりしたんだよ?もったいねー」

また、ミントさんか…

よく見てるんだな、すごいな。

★は、これ以上自分の心が醜くならないように必死で吹き出てくる感情を抑えた。

「とりあえず、今ミント呼んでくるからよ」

「……ぃいです」

「ん?ミントに何か頼むか?」

その声がやけに弾んで聞こえて★の中の黒い感情が吹き出た。

「いいです!!ほっといてください!!」

思わず大きな声が出る。

エース隊長は私のことなんて微塵も心配していない。

きっとミントさんに言われて様子を見に来ただけ。

私を口実にミントさんと話したいだけ。

私は自分の心が嫌になった。

でも止められなかった。

「なっ、なんなんだよ!!人がせっかく……!!ミントも心配して……!!」

「心配なんてされたくありません!!!!」

「おまえ!!」

「ほっといてください!!」

「あーわかったよ!!勝手にしろ!!見損なった!!心配する仲間をそうやってないがしろにするやつじゃねーと思ってた!!」


バタンと、大きな音を立ててドアがしまる。



こんな風にするつもりなんてなかったのに……

エース隊長にこんな風に八つ当たりするつもりなんて……

嫌われるつもりなんて、なかったのに!!

好かれなくても、せめて嫌われないようにって……そう…思ってたのに。


私はこれでもかってくらい泣いた。

それでも思い出すのはエース隊長のことばかり。


エース隊長と初めて会ったときのこと。

入ったばっかりで慣れない私にいろいろと教えてくれたこと。

馴染めない私の隣にいつもいてくれて気にかけてくれたこと。


それは隊長としての仕事で、勘違いしてはいけなかったのに


私は恋に落ちてしまった。


船に馴染むと同時に徐々にエース隊長と過ごす時間も減っていった。

それは隊長の任務完了、と言わんばかりに。


みんなが優しくしてくれたのも最初のころだけ。

慣れてくれば気にも止められず私は特に仲の良い人もいないまま。

一人ぼっちというわけでもないが、孤独を感じなかったわけでもない。

でも、気づけば誰かそばにいてくれたのに……


それを、寂しいだなんて。


構ってなんて……。


わがままだ。




「嫌になる……自分が………」


誰か気づいて、誰か褒めて、誰か……

自分では何もできないくせに誰かに何かを求めるなんて子供のすることだ。

手を伸ばさなかった自分が悪い。


小さな勇気はエース隊長の食事を用意して席を確保するというそのことだけ。

もしかしたら今日は断られるかもとドキドキしながらいつも待っていた。


それも、もうできない。

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