0になる距離
0になる距離エース隊長が誕生日だと知った日から密かに用意したプレゼント。
新年を迎えるとあって白ひげ海賊団は大宴会を昼間っから夜通し続けていた。
新年を迎えるカウントダウンをこんなに緊張しながらしたのは初めてかもしれない。
3………2……1…
『ハッピーニューイヤー!!!!!』
男ばかりの海賊船で地響きのように轟く声。
誕生日、おめでとうございます。エース隊長。
私は胸の中で幸せな気持ちになった。
この世にあなたが生まれてきてくれた奇跡を本当に感謝します。
プレゼントを胸に小さく祈った。
さぁ、勇気を出して……!!
どこにいるかなんてすぐわかる人だかり。
案の定みんなにもみくちゃにされているエース隊長。
プレゼントも山のよう。
私はエース隊長と話したことなんて数回しかない。
でもずっと憧れていた。
太陽のように笑う姿、敵船に一人で乗り込む時のやんちゃな表情。
どれをとっても好きが溢れてくるほどに想いは募る。
ずっと見てるだけでいいって思ってた。
隊長クラスと雑用じゃ釣り合わないとかそう言う言い訳を自分にして逃げてきた。
でも今日は一歩、踏み出す。
決めたんだ。
人だかりができている方へ一歩一歩、
心臓がどくんと近づくにつれて大きくうつのを感じながら進む。
やっとエース隊長本人が見えてきたことには心臓が口から飛び出そうだった。
「★、珍しいな」
話しかけてきたのは我が隊の隊長ラクヨウ隊長。
「そう、ですか?」
「いっつも端っこのほうで飲んでるじゃねーか。おうこいこい!!」
ラクヨウ隊長に腕をひっぱられ一気にエース隊長との距離が近くなる。
あぁ本当に口から心臓が飛び出るんじゃないだろうか。
そろそろ心臓が本気で心配になってきた。
「おっ、★か」
エース隊長の口から自分の名前が出てくるとは思わなくてびっくりした。
びっくりしすぎて口をパクパクするしかできなかった。
「いっつも端で飲んでるのに珍しいな!!お前も飲めよ!!これも食え!!誕生日にってくれたんだ!!」
だったらエース隊長が食べるべきなんじゃ……と思ったのも束の間私はパクパクしてる口に肉を突っ込まれた。
「んぐっ…ケホッ、ケホッ」
「あーわりぃ!!大丈夫か!?飲め!!」
そう言って上等な酒を渡される。
とりあえず飲むとなんとか咳はおさまった。
それを見て大爆笑の船員たち。
隊長クラスがこんなに大勢……
「★はいつも頑張ってくれてるからねぇい。もっと飲めよい」
マルコ隊長も上機嫌でお酒をついでくれる。
「いや、あの……」
「あ、これなに?」
「ハ、ハルタ隊長!!」
咳き込んだ拍子に落としてしまったエース隊長のプレゼントをハルタ隊長が拾い上げた。
「エースの誕生日プレゼントか!!」
うらやましいぜ、とサッチ隊長も言う。
「くれんのか!!ありがとな★!!」
そっとどさくさに紛れて置いてしまおうと思ったのにこんなに堂々と渡すことになるとは夢にも思わなかった。
「い、いえ……たいしたものじゃないんで」
「いーって、さんきゅ!!」
満面の笑みで言ってくれたエース隊長に私も自然と笑顔になった。
喜んでくれたことが嬉しい。
よかった、一歩踏み出してここまできて。
渡せたことに満足だった私は帰ろうと思ったがなかなか隊長達が帰してくれない。
その日は結局ずっとその場で飲んでいて
エース隊長とも会えば話をする仲になっていた。
少しづつ縮まる距離。
エース隊長、今私は心から思います。
あなたに出会えてよかった。
ドキドキも、潰れそうなくらい反応する心臓も
この幸せも、切なさも全部。
あなたがこの世に生まれてきてくれたから
出会って恋をしたから。
私の誕生日にお返し、とくれたプレゼントを握りしめて
私はエース隊長へ一歩、また一歩近づく。
見ているだけの私に勇気をくれたあなた。
今度は、ちゃんと伝えます。
大好きなあなたへ──
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