短編 | ナノ

熱(4/6)


いよいよ島に上陸する日がやってきた。

バカみたい、と思うけどその日の晩はパックまでして寝た。

いつもは着ないワンピースを着て上陸を待つ。

シンプルなワンピース、あーちょっと雰囲気違うなくらいの目立たないもの。

これを決めるのに何時間もかかってしまった。

ウキウキを止められない私はエースを探す。

まさか、忘れたとか…。

ありえる。

エースならありえる。

私の足は自然と早足になる。


「……付き合ってくれるっつったじゃねーか」

「明日じゃだめ?」

「ダメだ。頼むよ…お前しかいねぇって」

嘘……。

この声……。

──エースだ。

エースが話しているのは

エースが片思いをしているあの子。

「エース隊長のほうが先に約束してたもんね。わかったわ」

「わりぃな。今日は絶対…俺のものにしてみせる」

「ふふっ、楽しみ」

カラカラと音を立てて心が崩れていった。

私と約束してたじゃない。

こんなに浮かれてバカみたい。

わかってたはずなのに、心はあの子に捕らわれてるって。

何を期待してたんだろう私は。

バカだ。

大馬鹿だ、私は。

私は部屋に閉じこもった。

何もする気になれなかった。

気づけば寝ていたらしい。

静かな夜。

今日、エースはきっと、あの子のものになる。

私の役目は終わる。

何度も抱かれたこのベットの上にいることさえ苦しくなりそうだ。

いっそこの街で船を降りたら…

その思考回路は一瞬で止まった。






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