短編 | ナノ

熱(3/6)



何やら甲板が騒がしい。

聞けばもうすぐ上陸するとクルー達が騒いでいた。

久々の上陸に胸が踊る。

何を買おう、と考えているとエースを見かける。

久々の上陸にエースも子供のようにはしゃいでいる。

無邪気なところも好きだなぁ…とこっちまで微笑ましくなる。

あぁ、でも…そっか・・島に上陸するということは私の役目はなくなるわけで…エースとはしばらく会えなくなるな。

いつものように島の女性と過ごすだろうエースを思うとチクンと胸が痛くなった。

体も奪われてしまう、ほかの人に。

「★?」

いつの間にかそばに来ていたエースに声をかけられる。

「ボーッとして、熱でもあんのか?」

「あぁ…ごめん…ちょっと考え事。何買い物しようかなーってね」

「ふーん、そういうの好きなのな女って」

ハハハ、と乾いた笑いをする私。

女って、誰のことを言ってるの?

私と誰を比べてるの?…なーんて。

「そんだけ考えてるってことは、多そうだな」

「え?」

「荷物。買うものいっぱいあんだろ?」

「あぁ…うん、そうね。そろそろ気候も変わるし」

「しょーがねぇ、付き合ってやるよ」

「へ!?」

今まで心ここにあらずで話していた会話が急にリアルに戻ってきた。

「だから、荷物持ちしてやるっつってんだよ。言っとっけど一日だけだからな」

びっくりした。

ベット以外に誘われたのは初めてだった。

「一日あればさすがに十分よ!」

気づけば即答していた。

「じゃぁ、そういう事で」

エースもニカッと笑ってその場を去っていった。

期待に胸が高鳴る。

何着ていこう?

せっかくの上陸だ、ちょっとくらいおしゃれしたっていいよね?

でも気合入りすぎてるのもまずいな…。

完全に思考回路は恋する乙女だった。

ダメだと思っていても期待してしまう。

今の私にはエースが恋をしているナースの事なんてこれっぽっちも頭になかった。



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