熱(2/6)
「ん・・やっ」
「ここ弱ぇもんな★・・」
エースが首筋を舐める。
噛み付かれそうな感覚にブルリと体を震わせた。
「ここも好きだっけ?」
耳のそばから聞こえてくる声。
まるで外の世界を遮断してるかのように思える。
ピチャピチャと音を立てて侵入してくる舌にまるで二人しかこの世にいないようで★は声を大きくした。
自分の声と、エースの音、それだけでいい。
思わずエースの頭を押さえる。
「どうしたんだよ。今日はやけに甘えただな」
「んぁ・・気分・・よ」
「じゃぁ今日は甘やかしてやろうか?」
「・・いらないっ・・」
エースの手が膨らみを掴んだ。
甘やかされるのはごめんだ。
その後辛くなるのがわかっているから。
「まぁ、俺も我慢できねぇ」
エースはシャツをまくると指と舌でツンと主張した頂きを刺激した。
「あぁっ・・!」
舌はそのままで手は下へと伸びる。
十分すぎるほど湿ったそこを布越しに往復させる。
「すげ・・」
「や・・・」
「お前が濡らしてんだろ」
直接触れ、指を入れる。
「んあっ!」
急な刺激に体は素直に反応する。
「体は素直なのにな」
ニヤリと笑うとエースは自身を取り出し奥へと進んだ。
そこからはお互い男と女、ではなくオスとメスになる。
そう、この快感だけあればいい。
目を瞑るエースをチラリと見る。
私は抱かれてる時はエースを見ない。
見てしまえば溢れてしまうからだ。
抑えきれない感情がいつ爆発するかわからない。
こうやって夢中になってる時に盗み見ることしかできない。
その姿は見惚れてしまうほどで、
本当はその瞳に自分を映して欲しかった。
でもできないのはわかっている。
エースは恋をしている。
自分ではない、他の女(ヒト)に──
「んぁっ!!」
「っく・・!!」
情事が終わった後すぐにベルトを閉める音が聞こえる。
「またくる」
そう言って立ち去るエース。
情事の後の気だるさと虚しさが襲ってくる。
「またくる……か」
エースはナースの中の一人に恋をしていた。
私にはすぐにわかった。
ずっとエースを見ていたから。
セクシーなナースの中でも可愛さがあって頑張り屋のあの子。
エースは常にその子のことを気にかけていて
そっと手を差し伸べていた。
いつも見ていたからわかる。
恋焦がれる視線が、自分がエースに向けるその視線そのものだった。
その時に私は思った。
どうせ心が手に入らないのならば、体だけでもそばにいれたら……。
そんな歪んだ感情を持つほど、心はもう溢れていた。
どうしようもないこの恋心に、罰を、
絶対に手に入らない人が、愛してくれる一瞬、
見ているのは体だけ、
心は遠く・・
近づきはしない心が離れていくのを黙って指をくわえて見ている。
最近、エースとあの子が一緒にいるのをよく見かける。
今日機嫌がよかったのもそのせいだ。
あの子に会ったその日は機嫌よく私を抱く。
それに気づいてからは体を繋げている時でさえも満たされなくなっていた。
エースの中には常にあの子がいる。
そう言われているようで……
でも・・・
自分が望んだことなのだ。
エースをひどい男だと蔑む資格などない。
私は声を飲むようにして泣いた。
これも慣れてしまった。
今まで感じていた温もりが急に冷たくなってきて、寒い、体中が、心が。
私は自分の体を抱きしめて眠った。
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