短編 | ナノ

幸せのいるところ(7/7)



──トントン

「・・・」

いない事にしよう。

いきなり聞こえたノックの音で涙が引っ込んだ。

気づかれないように息を呑む。

体も硬直して、ただその人がさってくれるのを待つ。

こんな姿見せれない。

「俺・・」

「エース?」

しまった!と思った時には遅かった。

「お邪魔します」

とエースはペコリと挨拶をした。

そういうところはきっちりしてるのよね。

「おまっ・・」

「へ?・・あ」

私泣いてたんだ。

「なんでもないよ・・ほら・・あの・・」

グッと涙を堪えた。

ここで泣いてしまえば私の気持ちは溢れてしまう。

そうしたらきっとエースは自分の恋心を捨ててしまう。

優しすぎるエースだから、きっと・・。

「感動する本読んで・・あ、今度こそっと貸したげるね」

できるだけ普通に、明るく。

でも、エースは苦笑いを浮かべてた。

知ってる、そんな事できっと誤魔化されない。

ずっと一緒にいたんだから。

「考えたんだ。お前に幸せで笑ってたらいいって言われて」

エースはベットに腰掛けるとテンガロンハットを置いた。

そう言えば、エースはなんでここにきたんだろう?

さっきの会話でバレたんだろうか?

私は緊張して話を聞いていた。

「俺も、お前が幸せで笑ってたらいい。お前は?幸せか?今、笑ってるか?」

エースの視線がこちらに向いたのがわかる。

机はベットの横。

斜め後ろからの視線に私は表情がわからないようにうつむいた。

「俺は笑えねぇんだ。幸せでもねぇ。お前が今誰といて、誰と笑ってて、誰の隣で幸せになんのか・・」

え・・・?

「考えただけで100回は余裕でそいつぶっ殺してた」

「こんな短時間に・・」

すげぇ考えたからな、とエースは言う。

私はと言うと、まったくこの会話についていけなくて無、になっている。

だって・・そんなはず・・。

「笑うなら、俺の隣にしてくれねぇか?俺の手で幸せにできねぇか?」

涙が抑えきれなかった。

「なぁ、★・・」

後ろからギュッと抱きしめられた。

そして耳元で言われた。

「好きだ」

本格的に声を出して泣いてしまった。

「泣くのも、笑うのも、全部・・。困ったときは俺に頼れよ。泣きたい時は俺んとこで泣け」

「だ・・って・・」

「お前が隣にいなきゃ意味ねぇーんだよ」

力を入れて抱きしめられた。

「離して」

「やだ・・」

「私も・・抱きしめたい」

そう言うとエースの腕が離れて言ったけど、それは一瞬で腕を引っ張られてエースの胸に引き寄せられた。

「ずっと、好きだったの・・だから・・」

「もう言うな」

触れた唇は少し涙の味がした。




離れて気づいた。
お前が寂しそうにしてること
それから気になってどうしてもお前を探してて
見るたびにうつむいてるお前を見て
どうしても笑顔にしたくて・・
それでも俺の幸せを思うお前を見て
お前が言った言葉やら全て思い出したら・・
恋をしていたそいつは、お前と同じことを言ってた。
そしたら急に・・思ったんだ。

俺の幸せは・・
★のそばにあるって






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