幸せのいるところ(5/7)
──数日後
「なぁ★、俺・・お前に振られたのか?」
「はい?」
何をわけわかんないことを言ってるんだこいつは。
エースはいきなり部屋にきたかと思えばすっとんきょうな事を言い始めた。
「俺と別れてマルコと付き合い始めたんだって?」
なんだか黄昏るように言うエース。
「いやいやいや」
「俺たちいつ付き合ってた?」
「記憶にございません」
「マルコと付き合ってんのか?朝までマルコの部屋にいたんだろ」
「書類の直し徹夜でやってただけだよ」
ふーん、と興味なさそうに言ったあとエースはいきなりどすーんと落ち込んだ。
わかりやすっ。
「あいつにも誤解されてた。ぜんっぜんそんなんじゃねーのに」
ズキン。
危険だ。
心が壊れる音がする。
「励まされてんだけど・・すげぇ落ち込む」
本当に辛そうな顔をするエース。
こんなに落ち込むのを見るのはエースが父親の話をしている時以来初めてだ。
小さくうず埋まったエースを見てると手を差し伸べたくなってくる。
「ねぇエース」
問いかけにも答えないほど考え込んでいるエースを見て私は心を決めた。
エースが私を恋愛感情として好きになることはほぼありえない。
なのに私がエースの恋の邪魔をしてなんになるんだろう?
笑ってる顔が好き。
せめて幸せでいて欲しい。
かっこつけていいよね?
これくらい強がったって・・・。
「その誤解解けるまで私じゃなくてその子といなよ?」
「・・え?」
「こうやって一緒にいると、また復縁したのなんだの言われるよ?」
「別れてもいねーのに」
「付き合ってもいないけどね」
ズキンと痛む心に、それだけじゃない心に芯のようなものが私の中にあった。
エースの幸せを願う。
それを支えにエースを諦めよう。
「じゃぁ俺相談できなくなるだろ」
「相談できないのと一生誤解されんのとどっちがいい」
「・・・」
「悔いの残らない人生を。あんたのもっとーでしょ。やってみてダメなら他の手考えればいいんだから」
そう言うとエースはちょっと口元を引き上げた。
「お前にゃかなわねーな。わーったよ」
今度会うときはいい報告出来ることを祈る!
そう言ってエースは去っていった。
諦めるんだ。
そして願うんだ。
エースの幸せを。
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