短編 | ナノ

幸せのいるところ(3/7)



「・・い、おい」

「・・ん?」

「いいのかよ?もう夜だぜ?」

「え・・?えぇぇぇ!?」

あれから寝てたらしい私。

なぜかそこにいるエース。

「お前夕飯にこねぇから持ってきた。ほら」

そう言って山盛りのご飯を差し出すエース。

いや、こんなに食べれないって、あんたじゃないんだから。

そういう意味を込めて睨んだ。

「食べれねーなら食ってやろうか?」

「それが目的でしょ」

「バレたか」

ご飯を早々に食べ、残りをエースに差し出す。

餌を欲しがるワンコだ、こいつは。

私は残りの書類とにらめっこしていた。

殺されるな、確実に。

「手伝おうか?」

「いい」

「なんでだよ」

「二倍かかる」

しょぼくれたエースはきっと何か言いたいことがあるに違いない。

でも聞きたくない。

きっとあの子のことだから・・。

「なぁ」

「聞こえない」

「お前なぁ・・・」

私はエースの声が聞こえないように鬼の形相で書類を書きあげていた。

「・・お前以外に誰頼れっつーんだよ」

惚れた弱みっていうのはこれだから怖い。

自分が死にそうに痛くても、相手のために何かしてあげたくなっちゃうんだから・・・。

「どうしたのよ。いっとくけど、書類はやるわよ」

「さんきゅ」

それからの時間は地獄だった。

こんな話をしたけどどう思ってんだろうとか

次は何を話せばいいかとか

あいつと話すと緊張して言葉がでてこないとか

私の知らないエースがそこにいた。

「あいつが言ってくれたんだ。俺は俺だって。もし誰かに何か言われても俺のいいとこいっぱい知ってるからって」

そう言ったエースの顔が幸せそうで。

ドキン、とズキン、を同時に味わった。

エース・・そのセリフ、私も言ったよ?

何度も伝えたよ?

でも・・届かないんだ・・私じゃ・・・。

どん底に辛くなった。

エースの話を聞いているのか聞いてないのかわかんない感覚。

なんとか書類ができたのは夜中だった。




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