幸せのいるところ(2/7)
「進んでるかよい」
「見ての通りだよい」
「・・ご機嫌斜めかい」
普段は楯突くこともせずこうやって書類の山を押し付けられても黙っている私が
出来心とは言え特徴的な口癖を真似したのがご機嫌ななめだとわかるマルコ隊長はよく私のことを見てくれてると思う。
というかマルコ隊長は隊員ひとりひとりをよく見ている。
「お前とエースも長くなるなぁ」
「あーもう結構な期間一緒にいますね」
暇さえあれば二人でつるんでた。
そりゃぁもうダチだよね、男女を超えた。
「それだけ一緒にいりゃぁ喧嘩もするだろい」
「まぁ、しょっちゅうですけど」
「飽きずによく続くもんだ」
「・・続く?」
何が?
「お前ら付き合ってんじゃねーのかよい」
「はぁぁ!?」
腹のそこから声が出た。
「・・違うのかよい」
「どこをどう見たらそうなるんですか」
「どこをどう見てもそう見えるだろい」
毎日気づきゃ、一緒にいるし。遅くまでどっちかの部屋にいるだろい。
そう言われてため息をついた。
恋人と間違われるくらい一緒にいんのに恋愛のれの字もない私たち。
む・・虚しい。
「マルコ隊長ってよく見てますよね」
「いや、全員思ってるよい」
「・・・え?」
「あいつはお前以外の女と喋らねぇだろ。あーでも最近新人のナースと喋ってるねい」
ズキンときた。
エースが恋をしているあの子だ。
それを想像しただけで私の心は真っ黒になる。
「あんま、根詰めんなよい」
そう言ってマルコ隊長は頭をポンと叩いた。
女の子なら一度は憧れるシチュエーションだけど・・・
「いや、押し付けたのあんただし」
マルコ隊長が去った後一人でつぶやいた。
エースが誰かに恋をするなんて思ってもみなかった。
恋をするエースを見るのがこんなに辛いなんて思ってもみなかった。
私は机の上に腕を乗せて暗い顔を隠すようにそこに埋めた。
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