短編 | ナノ

女、男(7/8)




「・・・」

隣を見れば私の好きな人が眠っている。

体のあちこちが痛い。

のんきな顔して寝てる・・。

このまま起きないで欲しい。

できるだけそっとエースの方を向いた。

きっと目が覚めたらわりぃ、の一言で終わる。

そう、きっと。

この島の雰囲気がそうさせたんだろう。

そしていつも見ない私の女が、エースをそうさせた。

私を好きなわけではない。

すべて、まやかしだ。

私の想い以外全てが。

だから、お願い。

寝ぼけていた・・そう誤魔化させて・・今は・・

私はエースの体にそっと触れた。

「・・ん・・」

お願い、もう少しだけ。

そう思っていたのにエースは目を開けた。

「・・★・・!」

「あ、いや・・わりぃ」

わかってる。だから傷つかなくていいはずなのに痛い。

「・・よだれ垂れてる」

「あぁ!?」

「うそ、だよ」

忘れるから・・この関係だけは壊れないで欲しい。

どんなに傷ついてもいいからそばにいたいなんて女々しいにも程がある。

それに知っている。

この男がこのまま何もなかったことにしようなんてできないこと。

「昨日は悪かった」

「別に・・」

「乱暴にしちまったし、加減できなくてよ」

「いや・・あの・・」

そっちか!と違う意味の謝罪にちょっと顔が緩んでしまった。

「お前のこと女として意識した時なんてなかったからよ・・」

「知ってる」

「でも、昨日はお前の事いきなり女に見えちまって」

「ん・・」

起き上がってベットの上に座るエース。

ちょっと猫背になって縮こまってる姿は少し可愛いとさえ思えてしまう。

私も起き上がったほうがいいんだろうか?

でも何も着てないし・・

「それにお前目立つからよ、いろんな奴に色目使われたり・・お前他のやつ誘惑してたり・・」

「そんなこと!!」

シーツを手にとって思いっきり起き上がった。

「しまいにはお前、男引っ掛けてたよな?」

「あ・・」

否定できない。

向き合って座る形になって少し後悔した。

緊張する。



「それで・・すげぇムカついて・・」

「・・・え?」

「だから!・・なんか嫌だった。お前が他の奴と・・って思ったら無我夢中でよ」

「エース・・?」

「わけわかんねぇんだ・・自分でも」

頭を掻いて照れくさそうに言うエース。

「でも・・」

そう言ったエースは私の手を引いて自分の胸へと押し付けた。

「お前が女になるのは俺の前だけでいい。他の奴に見せたくねぇ」

「エース・・・」

「わりぃ、順番逆になった。お前の気持ちも聞かねぇで」

信じられない気持ちとドキドキが収まらない。

気づいたら泣いていた。

「泣くほど・・嫌だったか?仲間に・・裏切られたと思ってるか?」

私は横に首を振った。

「頼む。嫌いにはなるな。身勝手だけどよ・・」

「好き」

自然と口から出てた。

「エースが私を女として見てないのはわかってた・・。でも好きだった」

「★・・」

「どうしたらいいかわかんなかった。今回も・・任務だってわかってたけど・・少しはエースのこと・・んっ・・」

本格的に泣きそうになった時にエースはキスをしてきた。

「女の涙に弱ぇんだ」

「本当に・・私でいいの?流されただけ・・とか。私普段こんな格好しないよ?女っぽくないし、この島にいるときの私は・・」

「うるせぇ」

「え?」

「一回意識しちまったもんはしょーがねぇだろ。今更女じゃないと思えなんて無理だ」

「エース・・」

「それに・・可愛いって思っちまってる。色っぽい服も着てねえ寝起きのボサボサ頭がよ」

ニィっと笑うエースはいつものエースで・・

「なんかむかつく!!」

腹にパンチを入れる私はいつもの私だった。

「てめぇ・・おとなしくしてろよ!」

「やだ!だいたい船に帰ったらなんて言われるか!泊まる予定じゃなかったのに!」

「言わせとけよ」

「馬鹿エース!!」

「いーだろ、見せつければ」

暴れる私をエースはいとも簡単に組み敷いた。

「体力バカ」

「まぁな」

私たちは笑い合ってキスをした。



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