短編 | ナノ

女、男(5/8)




「はぁ・・・」

宿に行ってみたけどそれらしい情報はなかった。

後はこのバーだったけどそれも情報はない。

帰るに帰れずに私は酒を煽った。

エースとは完全に終わってしまった。

八つ当たりもいいとこだ。

女として見られていないのは承知だったはずなのに。

ちょっとは女と意識してくれるんじゃないか、なんて淡い期待もあった。

それが叶わなかったからって・・我ながら笑える。

「一人?」

いつもより酒が進み朦朧としてきたところに声をかけてきた男。

あ、少しエースに似てる。

筋肉質なとことか黒髪がちょっとはねてるとことか。

「えぇ、ふられちゃったみたい」

私も女なんだな、誰かに甘えたくなる。

似てる人、とあれば余計。

「忘れさせてやろうか?」

クラクラする。

エースに見えてきた。

「どうやって?」

「そりゃぁ、この島でってなりゃぁ・・な?」

詮索をしてだいぶ時間が経っている。

エースも任務を遂行しているのであればここに来たっていいはずだ。

それが来ないということは・・

「歓楽街・・だものね」

誰か捕まえてよろしくヤってるのかもしれない。

ツキンと心が痛む。

もう楽になりたい。

そうだ、何もかも忘れて・・

忘れなきゃ・・

「いいわよ、忘れ・・させてね」

エースの面影を背負う男に抱かれるのに忘れさせてもないだろうけど・・

足取りのおぼつかない足で立ったので男にもたれかかる。

男の人の腕、今日掴んだ腕とはちょっと違う。

白ひげ2番隊隊長だもん、そりゃぁ違うか・・。

「可愛いな」

可愛い、なんて言われなれてないせいか頬が熱くなる。

ちょっとキュンとした。

「さっ、行こうぜ」


「待てよ」

まだ頭がボーッとしている。

「そいつをどこに連れてく気だぁ?」

あるはずのない人影が見える。

相当酔っ払ってるのか・・

「誰だお前」

「俺が聞いてるんだぜ?俺の女をどこに連れてく気だ?」

ありえない言葉が頭に響く。

妄想も大概にしないと・・

「なんだ、男持ちか、さっき振られたっつってたのに」

「わりぃな、気が変わったんだ」

チッと舌打ちをされて私はポイっと投げ捨てられる。

これは、妄想なんかじゃないらしい。

私を抱きとめたその感触や匂いが私の中に染み付いている。

「ふざけんなよ?」

「エース・・」

「こっちこい!!」

急に腕を引っ張られて店を後にした。

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