女、男(2/8)
「ちょっと!!なんで私!?」
ある日の朝、マルコ隊長とサッチ隊長に呼び出された私とエース。
「そうだよ!!堂々と上陸してそいつ探してブッ飛ばせばいー話だろ!」
エースも二人に抗議をする。
「村人達を不用意に怖がらせる必要はねーだろ?それにそいつがその島にいるとは限らねーんだよ」
「情報が欲しいだけでそこまで人員はさけねーよい」
呼び出されて告げられたのはこの近くにある島への潜入捜査をしろ、という内容だった。
白ひげの傘下の海賊の一人が仲間を裏切って逃亡した。
裏切りは白ひげの名に傷をつける。落とし前をつけるのが筋。
その裏切り者がこの近くの島にいるという情報を聞きつけたので私とエースで情報を聞き出してこいという事だった。
「その島はここら辺じゃぁ有名な歓楽街だ、怪しまれずに探るには男女ペアが理想っしょ!」
面白そうに言うサッチ隊長になぜか敵意を覚えて睨みつけた。
「なんで私!?ナースのほうがそう言う場所には向いてるじゃん!」
「ナースは親父の看護が仕事だよい」
「そーそーそれにもしそいつに会ってもナースじゃ太刀打ちできないだろ」
「エースだったら大丈夫!」
グッと笑顔で言ったが
「ナースの肌に傷でもついたら・・」
シクシクと悲しそうな顔をするサッチ隊長に引いた。
「じゃぁ、百歩譲って私が行くとしましょう。しかし!エースじゃなくたって!!」
「ストライカーあるしな」
「お似合いだよい」
お似合いという言葉にちょっとときめいた事は内緒にしておこう。
「なぁ・・肝心なこと忘れてねーか」
今まで黙っていたエースが口を開いた。
「「「???」」」
「こいつが歓楽街の女に溶け込める気がしねー・・・」
「「「・・・・」」」」
私は無言でエースを殴っていた。
愛ある拳はきくね☆
「俺がいるし連れてくのナースにしようぜ。こいつがそんなとこにいるの想像つかねーよ」
色気もねーし、第一女じゃねぇ。
そう言ってのけるエースに最早何も言えなかった。
わかってるけどさ・・。
「こいつと俺が一緒にいたって怪しまれるだけだって。どー考えたって・・なぁ」
上から下まで見られてため息をつかれた。
「そこらへんは任せとけ!」
みるみるうちにナース達に囲まれる私。
いつもは華のようなナースがなぜか悪魔に見えた。
「頼んだよい」
はーいと言うナース達の笑顔はどう見ても悪魔だった。断言しよう。
「こりゃぁ・・」
「見間違えたよい」
無言であんぐりしているエースに満足そうなサッチ隊長とマルコ隊長。
「・・笑いたければ笑っていーよ、もぉっ!」
バッチリとヘアメイクをされ、ナースのお姉さまのお洋服を借りた私はいつものキャラじゃない。
人って化けるもんだなって思ったけれども似合ってる気がしない。
「いや・・」
エースは何も言わなかった。
「何照れてんだエース」
「そんなんじゃねーよっ!!やっぱりナースにしようぜ!な!」
「「却下」」
任務だと思って割り切ろう。
やっぱりどんな格好をしていても私は女じゃないらしい。
もう既に心が打ち砕かれた私は傷ついてなんかないんだから・・。
「エースもそれらしくできてるし、お似合いだぜ!」
「チャラ男」
「あぁ?」
仕返しとばかりに攻撃するが、やっぱりかっこいい。
背中の刺青を隠すために羽織ったシャツと脱いだ帽子。
すっかりと大人な男に仕上げられている服装にドキっとした。
「お前らわかってんだろうな?」
サッチ隊長は言った。
「歓楽街に溶け込めよ?腕の一つでも組んで寄り添え!今からナニしようっていう奴らがわんさかいるんだからよ!」
「怪しまれないようにせいぜい頑張って来いよい。あくまで任務なんだからな」
「わかってるわよ・・」
「ちょっとやってみろお前ら!」
「「はぁ?」」
「腕組むくらいガキじゃねーんだからできるだろい?」
シレっと言ったパイナップル頭が憎い。
これは任務だ・・。これは任務これは任務。
そう思っているとグイっとエースに腰を抱かれた。
「文句ねーだろ」
エースはそう言うとさっさとストライカーを準備し始めた。
慣れてるんだなと、ちょっと落ち込んだけど今ので吹っ切れた。
やっぱり私が変わろうとエースが私を女だと見ることはない。
もうわかった。
だから、任務に専念しよう。
そしてもう絶対にないであろう男と女の時間を目一杯女としていよう。
「いってきます」
私もストライカーに乗り込んだ。
「ごめんなさいね、お色気ナースのお姉さんじゃなくて」
「あぁ残念だ」
そこからは口を聞けなかった。
この任務は誰にも渡したくない。
やっぱりあいつがいいと引き返されるのが怖かった。
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