短編 | ナノ

女、男(1/8)



「おい、大丈夫か?」

「あ、ありがとうございます」

目の前でドサっとほんのちょーっとの荷物を落としたお色気ナースにエースは手を差し出す。

「重いだろう?持ってってやるよ」

「いいんです!これくらい!」

「いーって。おい、あと頼む!」

・・・見ました奥さん?

「何が頼むだバカヤロウ」

お色気ナースよりもはるかに重そうな荷物を一人で運べってか。

いや、運べるけれども。

エースは私を女として見ていない。

私が荷物落としたときは助けようともせずにお腹を抱えて笑っていた。

「こんなにも扱いに差がでるもんかね・・っと」

うん、楽勝。

重い荷物を軽々と持てる事に複雑になりながら食料庫へ向かう。

無事に荷物を食料庫へと運び肩を鳴らしていたら

「おーさんきゅーな」

と悪びれもなくエースが言った。

「あーーー重かったぁぁぁ」

「あ?あれくらい余裕だろ」

まだまだだな。とエースが笑う。

そういうこっちゃないんですけどね。

嫌味も含めていったんですけどね。

私を女だと思ってないエースはそんなのおかまいなしだ。

なんでこんな事になってしまったのか・・・。

この近いようで遠い距離を嘆くばっかりで何もできなかった。

恋心を自覚した時にはもう、仲間になっていた。



「エース隊長!さっきはありがとうございました」

ちょーっとの荷物を運んでもらったさっきのお色気ナースがエースに駆け寄った。

「あー別にたいしたことじゃねーよ」

優しく笑うその顔は見たことがなかった。

優しくて少しはにかんでて照れくさそうな顔。

私は一歩ずつ後ろに下がった。

お似合い。

その二人だけなぜか違う空間にいるようで・・・

一人ぼっち。

私はそっと背を向けた。

きっとエースは普通に恋をするのだろう。

あぁいう子と、あぁいう雰囲気で・・。

もしかしたら今もしているのかもしれない。

だから・・。

「邪魔だよい」

「あ、すみません」

「・・・?」

いつの間にか止まって考えこんでいた私は通行の邪魔だったらしい。

「気持ちわりぃよい」

「ハハ、すみません」

心ここにあらず。

喋り方だけで誰かがわかってしまうマルコ隊長の顔を見ず私は道を避けた。

「何かあったか、聞いてやるよい」

素直に道をあけるだけで心配されるなんて・・

よっぽど可愛くない女なんだな私。

「大丈夫です」

私はそう言うとさっさとその場を去った。

慌てて回れ右をしたせいでさっきの光景にまた会ってしまう。

楽しそうに笑い合う二人。

ズキンと心がいたんで途端にパキンと何かが壊れた。

手が届かないのはわかっていたはずだ。

自分が女と見られていないとわかっていてもどうすることもできずに恋の終わりを予感していたはずなのに・・

「どうしろっていうのよ」

「んー?何が?」

「っ!?・・なんでもありません!」

いつの間にか聞かれていたらしい独り言にサッチ隊長が答えたのにビックリしてまたそこから逃げた。

どんだけ逃げるんだ私は。

★が去ったあと

「なるほどねー」

サッチはエースとお色気ナースを見てニヤリとしていた。

「★見なかったかよい?」

「んー?さっきまでいたけど」

マルコの問いかけにサッチは答えた。

「そーかい」

「★の事気にかけてんだな、マルコ。どうやら原因はアレらしいぜ」

サッチの見つめる先にはエースとお色気ナース。

マルコはそっとため息をついた。

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