短編 | ナノ

君の隣で(7/9)


エースと絶交して一週間がたった。

相変わらずサッチは絶交を取り消せと言ってくる。

エースの機嫌はいまだ絶不調らしい。

登下校の時間をずらせばクラスの違うエースと会う機会もない。

でもエースの噂は飛び込んでくる。

フリーのエースを誰々が狙ってるとかそんなの・・。

「ねぇ聞いた?今日エースくんさぁ」

エースが今日告白されるらしい。

この学校1の美女に。

付き合うのかな・・

そんな事を考えたらまた胸が苦しくなった。

突き放してもなおエースは私を傷つける。

遠いからその分辛くなる。

それならいっそ・・

─ヤバイ!

私はまた例の空き教室に飛び込んだ。

息ができないくらい込み上げてくる。

「っく・・」

この間とは比べ物にならない。

他の子といるエースを遠くから睨んでなきゃいけないんだ。

そばに居ることもできない私は悔しくて恨んでしまう。

「いきなり走るから何してんのかと思ったら・・」

「っ!」

「泣いてんのかよい」

マルコの声が聞こえた。

一瞬涙が止まって、また泣いた。

言葉がでてこない。

「エースのことだろい」

マルコはわかってると思ってた。

はぐらかすので精一杯でなにしてんだ、という視線がわからないほど私は誰かさんみたいに鈍感じゃない。

「辛くなったか」

ただ泣いてるだけで本当に言葉がでない。

今声を発してしまったら

きっと大声を出して泣いてしまう。

「バカだよい」

マルコが優しい声で言うから思わずマルコに抱きついた。

恥ずかしいとかそんなん言ってらんない。

「何やってんだよ」

低い声が響いた。

目を見開いたせいか今まで流れ落ちていた涙が零れるのに時間がかかった。

「マルコ・・てめっ・・」

「ちょっ!やめてよエース!」

あまりに本気でエースがマルコの腕をつかむから涙なんてひっこんだ。

「エース!」

振り払われたエースの手がまたマルコに掴みかかろうとしてる。

「なんで泣いてんだよ」

「え・・」

「なんかされたか」

私は首を思いっきり振った。

「じゃぁなんで!」

「相談してたの!」

「相談?」

「そう・・叶わない、恋の・・相談・・」

一生叶わない・・。恋の相談。

「辛くて・・それで・・」

「マルコには言えんだな」

「え?」

「俺には言えなくてマルコには言えんだな!!」

あまりに冷たい目で見られたから思わずまた泣きそうになった。

「俺ばっかだ。俺ばっかいっつも!お前はなんも言ってくれねぇ!!」

言えるわけないじゃん、バカ・・。

その距離を、寂しがってくれてたの?

私にいろいろ話すのは距離を縮めるため?

言わなくてもわかる。

“幼馴染”・・だから。

「ごめん」

「・・別に」

「★、大丈夫か」

マルコは言った。

「うん、ありがとう」

苦笑いをする。

大丈夫。幼馴染・・やれるよマルコ。

「エース、おまえ元彼女にも呼び出されてるんだろい」

「えっ!?」

「・・・」

俯くエースの両腕を私はガッチリ掴んだ。

「エース!早く行かなきゃ!!ごめんね、今度はちゃんとエースにも相談するから!私の恋はさ・・もうやぶれちゃったけど他の事とか・・」

「わかってねぇじゃん」

「何言って・・」

「強がり、バレバレなんだよ」

そんなに鋭いのに、なんで私の恋心には鈍感なんだろうこの男。

「わ、わかった。わかったからとりあえず早く・・」

「嫌だ」

「え?」

「お前、大丈夫じゃないじゃん。話聞くから・・それから行く」

完全に居座る気満々のエースに私は涙を流した。


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