短編 | ナノ

いつか思い出になって(2/2)


「もういい!」

マルコは★を抱きしめた。

「やめろよい。もういい。もう、いい・・」

マルコの声は震えていた。

声をあげて泣いた。

何も考えずただ泣いた。

なんで泣いてるのかわからなくなるくらいに・・。

「ありがとう・・」

「どーしようもねぇ兄貴だな・・俺は」

「そんなことない」

「妹の傷ついてる姿見たくなくて自分のために止めちまったよい・・」

乗り越えようとしている★を痛々しくて見てられなくて見たくなくて・・

それすら受け止められねぇ俺は・・まだまだだよい。

親父、あんたならきっと全てを受け止め見守れてたはずだ。

俺は小さい。

俺は弱い。

「マルコが止めてくれなかったら壊れてたよ」

「壊れても元に戻れる。お前ならきっと・・」

それを手助けすることが俺の役目であって、手を出しちゃいけないってわかってたはずなのに・・

「そうだね・・そうやって信じてくれる人がいるんだもん」

「★?」

「乗り越えなきゃ。生きなきゃ・・。マルコにそんな顔させんの辛い」

「悪かった・・」

強がりを言わせたいわけじゃないのに。

いつだって周りを気にする★だから一人にさせたのに・・。

「エースは死んだ・・死んだ。もういない。もう私の未来にエースはいない・・」

涙は枯れることなくでてくる。

いくらないたって枯れてはくれない。

「まだ痛みを受け入れるだけの強さは私にはない・・。強くならなきゃ・・もっと強く」

胸を張って生きられるように。

エース?

貴方がいない明日を生きる私はこれからどんどん傷ついていく。

あぁもういないんだって思うたびに貴方を思って泣いてしまう。

そんな私にきっと貴方は私より傷ついてしまう。

でも許してね?

「私の未来にはいつだってエースがいた・・。亡くして初めてわかった」

エースがいる当たり前がこんなにも自分の中にあったこと。

「私の未来には、こんなにもエースがいた」

「★・・」

私の心の中はエースが大半を占めてて

それを失うことは自分を失うことで・・。

ポッカリ開いた穴、じゃ収まりきれないくらい

それは埋めることのできない奥深くにまで入り込んでいた。

「ありがとう、マルコ。エースがいない未来は私には暗いだけかと思ってたけど・・。私、一人じゃない」

「当たりめぇだよい」

エースしかいなかった。

私の生きる道にはいつだってエースがいた。

それが一瞬で失われた。

貴方と生きる未来は私にはもうない。

でも貴方と一緒に生きてもいい?

貴方を思って生きていていい?

一緒に、生きてくれる?

エースの人生を背負って、私は生きていこう。

私はニカッと笑った。

エースが見せた強がりを真似して。

「エース、愛してる。マルコ、ごめんね?最後の挨拶は・・できないや」

「そうかい」

「だって私の中にはいつだってエースがいるから・・」

私は弱い。

まだエースの死を受け入れられない。

新しい一歩なんて踏み出せない。

貴方にとどまる私だけど、

貴方に背中を押された気がした。

★、笑え、笑って・・悔いのないように生きろ!

エース、私は今も

貴方の居ない明日を生きてます。

エース・・貴方を思うと痛く苦しい気持ちと

暖かくて顔がニヤけてしまうほどの幸せを感じます。

貴方を支えに

私は、今・・笑っています。






強がって笑ってる★に何もできねぇ俺をお前はどう思う?
今もお前にすがりながら生きてる★を
可哀そうだと嘆くのかよい。
それでも偽りだとしても幸せそうな★を見て・・
何もできねぇ兄貴を・・

どうか殴ってくれよい



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