神に誓う
神に誓う「誕生日おめでとう」
「めでたくもねぇだろ」
言葉と共に誕生日プレゼントのお酒を渡す。
憎まれ口を叩きながらしっかりお酒だけは受け取るゾロ。
嬉しそうな顔に★はニッコリと笑う。
「私も飲もうかなぁ」
「めずらしいな」
「ゾロの誕生日だからね」
「過ぎたけどな」
あ、しまった。と言う★にまぁいいじゃねぇかとゾロは頭をポンと叩いた。
「お誕生日おめでとう」
「「乾杯」」
ゆっくりと流れていく時間。
ちょっと開いた二人の距離。
ぎこちないようでそれでも心地いい空間。
「ゾロ・・」
「あぁ?」
「生まれてきてくれてありがとう」
腕に顔をうずめてぼそっと呟く★にゾロは心底驚いた顔をした。
生まれたことに感謝されるなんて思ってもみなかった。
「ゾロは私たちを導いてくれる」
「・・いや・・」
「船長を信じる力をくれる。自分を信じる力をくれる。もっともっと・・って思わせてくれる」
「そんなこと・・」
「ゾロは私にとって必要なこといつだって示してくれるの」
「・・・お前だって・・」
「え?」
うずめた顔を少しゾロに向ければまっすぐに前を向いていた。
「俺に力をくれるのはお前だ。張り詰めてたもんぬぐってくれるのもお前だろ」
「そんなこと・・」
「お互い様だ」
★は腕の中で押さえきれない嬉しさを笑顔に変えた。
「本当に良かった。ゾロが生まれてきてくれて、出会えて」
「奇遇、だな。俺もそう思う」
「え?」
「お前に会えてよかった」
「・・そっか」
仲間として、か。女として、か。
・・でもいい。そう思ってくれてるなら。
「★」
★が名前を呼ばれて上を見上げるとまっすぐ前を向いていたゾロがまっすぐ★を見ていた。
「ゾロ・・ありがとう」
「どーいたしまして」
言葉がなくてもわかった気がした。
★はゾロの体に寄り添った。
「酒、うめぇな」
「そうだね」
「あんがとな」
「どういたしまして」
胸の鼓動が早い。
それはゾロも同じで、二人同じリズムで大きめになっているのがわかると安心する。
「★」
名前を呼ばれる度に跳ね上がる鼓動と安心する気持ち。
重なる唇はなんの迷いもなく
あまりに自然で運命を信じたくなった。
「ありがとう、神様」
「あぁ?」
「出会わせてくれて、こうやって隣にいさせてくれて」
「神様、か」
「独り言だってば」
神様なんて信用しない。
そんなもん信じるのは弱い奴のすることだ。
そう思っていたゾロ。
「悪くねぇな」
「え?」
「独り言だ」
神なんて信じたことはない。
でもお前が言うなら、それもいい。
「ずっと、俺の隣にいるのは★、お前だ」
神なんて不確かなものに誓うくらいなら
己自身に誓ってやる。
それでもお前が望むなら
居もしない神に誓ってやってもいい。
お前を一生守ると誓う。
お前と会えたことが神の仕業なら
俺は神に感謝する。
産まれたことが神の悪戯なら
俺は心から感謝する。
この世に生まれ、お前に会えたこと。
俺は何より、幸せに思う。
居もしない神に誓う
ありもしない永遠を。
「ゾロ・・大好き」
お前とだったら永遠も誓えると本気で想う。
生まれてきてくれてありがとう。
私にとってたった一人の人。
あなたが産まれてきてくれた奇跡にありがとう!
prev /
next