知りたくもない、この感情の名前なんて
知りたくもない、この感情の寂しさを紛らわすように
私たちは重なった。
何があったわけでもなく
気がつけばそれが当たり前の関係になっていた。
突然部屋にやってきたかと思えば首筋にかみつかれる。
「っ・・エース、やっ」
手慣れた様子で服の下に手を滑りこませ素肌をなでる。
「や?“いい”の間違いだろ?」
そのちょっとした仕草にでさえ★は震える。
その事がわかるくらいエースは★を知っていた。
「ちょっ、待って・・」
「待たねぇ」
抵抗しても無駄だ。
すぐに快楽に溺れる。
エースと★の事は白ひげのクルーも暗黙の了解で
大事な妹分に手を出されたからといって怒るやつもいなければ
家族の輪を乱してくれるなと諭すものもいなかった。
それだけ自然な関係だったし
表ではなんら変わりはなかった。
「んっ・・あっ・・」
「イケよ、我慢・・すんなっ、て」
言葉少ない二人の行為。
静かなようで熱かった。
「あっ、あぁっ・・!!」
「俺もイクっ!」
戦いのあとのような興奮とだるさ。
勝利でもしたかのような高揚の仕方。
癖になる・・。
「★・・」
「今日はもう無理よ?」
「なんでだよ」
「疲れてるの。なのに激しすぎ。何あったか知らないけど」
★は汗でまとわりつく髪をまとめてエースに背中を向けた。
「別になんもねーよ」
「何もないのに急にするのもどーかとおもうけど」
★が冷たく言えばエースは無理やり自分のほうを向かせ深い口づけをした。
そしておでこにキスをすると★を抱きしめた。
★は少しため息をつき大人しくエースに抱かれた。
そして眠る。
この男が自分を抱く理由がわからない。
苛立ってる時もあれば
ひどく哀しい目をしている時もある。
甘えてきたかと思えば
服従を催促する時もある。
その影が何か、知りたくもない・・。
知らなくていい。
自分を抱く、この腕だけ知っていればいい。
少しだけ強く力を込めエースを抱きしめて眠った。
自分のこの想いさえ
わからないで、それでいい。
知りたくもない、この感情の名前なんて
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