カーテンの隙間から差し込む日差しが眩しい。
でもまだ起きるには勿体ない気がして、隣にある温もりにもっと近づくと、抱きしめる力が強くなって額に柔らかい何かが当たった。思わず目を開けたら、優しく微笑むナマエの顔があって、寝起きの心臓には刺激が強すぎて目が覚めてしまった。
「おはよう」
「ん…おはよ」
目を閉じて顔を寄せれば、今度はちゃんと唇にキスしてくれた。最近は、お互い忙しくて顔を合わせることが少なかったから、久しぶりのおはようのキス。大好きが溢れて抱きつけば、ナマエも抱きしめ返してくれる。しあわせだ。
「マサル、そろそろ起きるぞ」
「んー、もうちょっと」
「…しょうがねえなあ」
なんて言いつつ、嬉しそうに抱きしめてくれるナマエがどうしようもなく好きでたまらない。こんな日が毎日続けばいいのになあ。


ベッドでまったり他愛もない話をしてたら、もう太陽が真上に昇りかけていた。
「なぁ、たまには外食しねえか?」
「する!前テレビでやってたとこ行きたい!あ、でも予約…」
「だろうと思って、さっき予約しといた」
「なにそれカッコよすぎむり」
枕に顔を埋めたボクの頭をナマエが笑いながら優しく撫でる。ナマエは小さい頃からそうだ。ボクすら言ったことを忘れてるのに、ちゃんと覚えててくれていて、いつも喜ばせてくれる。こんな優しくてカッコいいナマエに惚れないわけがないし、ずっと片想いを続けてチャンピオンになった日、勇気を出して告白をした。信じられないことに、ナマエもボクと同じ気持ちだと言ってくれて、恋人になれた。今でもまだ信じられないくらいで、本当に、ボクは幸せものすぎる。
「うぅ、すき」
「はは、俺も。ほら、早く行くぞ」


いつも被らない帽子をかぶって、眼鏡をかければ完成。鏡の前で最終チェックをしてたら、ナマエが少し眉を潜めてこちらを見ていた。
「どこか変?」
「いや…、眼鏡かけんだなって」
「うん、前バレちゃって大変だったでしょ」
軽い変装だけだと、どうしてもバレて囲まれちゃってナマエとデートどころじゃなくなるから。久しぶりなのにナマエに甘えられないとか嫌だもん。
「だったな…」
「やっぱり、…似合ってない?」
普段しない格好だから、似合ってないのかもしれない。そう思うとだんだん色んなことが不安になってきた。どうしよう。足元で視線を泳がせていると、ナマエがおもむろに眼鏡を外してきた。不思議になって見上げると、綺麗なナマエの顔が近づいてきて唇に柔らかい感触。
「似合ってるけど、キスしにくくなるだろ」
「ヒェッ」
心臓が確実に3秒は止まった。何その顔、ずるい。
「ははっ、変な声出たな」
「本当に無理。心臓に悪すぎる。もう一回」
「はいはい」


美味しいご飯を食べて、買い物もして、人通りの少ない道を選んで手を繋いで帰って、一緒にお風呂に入って、後は一緒に寝るだけ。楽しくて、幸せで、最高な1日だった。
明日の準備をするナマエを待つ間に、帰り道でこっそり撮ったナマエの写真を待ち受けにする。これで明日からも頑張れる。だけど、またナマエに会えない日が続くのかと思うと、寂しくなってきて、ようやくベッドに入ってきたナマエに抱きつく。少し冷めたベッドの中が今度は二人の温もりで暖かくなる。まだ寝たくないのに、ナマエの落ち着く香りで、眠くなってきてしまった。おまけに頭も撫でてくれるから余計に。
「もう寝るか?」
「まだ、」
「でも、目がトロンってしてるぞ」
「やだ」
「ふっ、もうほとんど開いてねえじゃん。無理すんなよ」
「やだ…もったいない」
「なにが?」
「きょう、しあわせだったから…まだ、もっと、ナマエといたい、」
「…これからも、ずっと一緒にいるんだから、今日はおやすみしよう、な?」
「ずっと?」
「おう、じいちゃんになっても、ずっと」
「そっかあ」
「そうだよ。おやすみ、マサル」
「おやすみ、ナマエ」
おやすみのキスをしてもらった。意識がなくなる前に、ナマエが愛してるって言ってくれた。これからも、ずっと一緒だって。うれしいなぁ。ボク、ほんとに、すごくしあわせだ。

アンダンテ

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