「何だって?もう一回」
そう言って人差し指を立てるとおっさん、ことマルコは大きなため息をついて呆れた目線を送って来た。だって急に信じられるか?そんな、
「俺は、別の世界から来たんだよい」
ありえないことを易々と飲み込めってほうが、おかしい。どうしてそんな冷静でいられる。
「頭打ったか?」
「打ってねえよい。お前は打ったけどな」
「おっさんのせいだろ!」
「誰がおっさん、だよい」
「いででででで、ごめんなさい!!!!!」
ズビシッと指をさせば物凄い力で指を握り込まれた。指がペラペラになるかと思った。どんな握力だ、おっさんのくせに。赤くなった人差し指にふーふーと息をかけ冷ます。痛い。
「なんで別の世界からきたってわかるんだよ」
「…此処を出た後、色々と周って見てわかったんだよい。お前は"偉大なる航路"なんて知らねえだろい?」
「知らねえ」
「"ひとつなぎの大秘宝"も、"海賊王"も、何もかも、知らねえだろい?」
「…知らねえ」
「…やっぱりねい」
マルコはそう呟くと、小さく笑った。
「俺も、此処の世界のことは知らねえよい」
なんだよ、その顔。
「帰れるまで、此処にいろよ」
「は、何言って」
「どうせ、行く宛なんてどこにもねえんだし」
「それは、そうだけどよい、お前は、信じるのかよい?」
「そりゃ信じがてえ話だけど、信じてやるしかねえだろ」
傷ついた顔して無理に笑う奴を無視できる勇気を、俺は持ち合わせてない。


「で、何か質問あるか?」
「いや、ねえよい」
こちらの世界についてわかる限り説明をした。帰れるまで、いつになるか分からないが生活していかなければならない世界だ。無知なことほど怖いものはない、と俺はそう思う。日常生活の細々とした説明はまだだが、ぐう、と互いの腹から同時に腹の虫が鳴ったので2人して息をついて笑った。
「とりあえず、飯にしよう」
「よい、…名前」
「ん?」
「これから、よろしく頼むよい」
「おぉ、よろしく!」


知ることは怖い、知らないことはもっと怖い

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