050 (10/11)

「え、あ…あのっ!」
「ん?」
「て、手!」
「人多いし、危ないよ。」
「〜〜!!」



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はっ、と意識が戻る。
目の前には不思議そうな豹の顔が。

「なした、ぼーっとして」
「……いや、ごめん」
「……」

男の人と手を繋ぐなんて初めての経験だった。
先輩と別れて数時間経つ今でも、記憶は鮮明なままだ。
私が買ったりんご飴を美味しそうにしている豹を一見して、ばれないようにため息を吐いた。
なんだか悪いことでもしてしまったかのような罪悪感に苛まれる。
豹を見ると余計に。なんだろ、よくわかんない。

「…はあー」
「帰ってきてから、ため息ばっかりだべ」

どうやらばれないようにしたつもりのため息も、ばれていたらしい。
あまり目にしない豹の難しい顔は、私の罪悪感を増長するには充分。
ごめんね。よくわからないけど、謝りたくなる。

「…豹と、祭り行けば良かったなあ」
「つまらんかったのかい?」
「ふぅ、気にしないで。もう寝ようかな。明日部活あるよね」

お休み、と立ち上がると豹に手首を掴まれた。
ドキ、少しびっくりする。
豹を見た。真顔。緑色の綺麗な猫目がこれでもかってくらい、私を凝視している。

「ひ、ひょう?」
「じゃあさ」
「…う、うん」
「来年は俺と一緒に行くべ!」
「うん!」

ああ、やっぱり今日も豹と行けば良かった。
私はこの笑顔が大好きなんだ。

12.07.24