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もうすぐ区大会。
三年生の引退がかかっている公式戦。

「今日から一年もゲームするぞ。二年が一年のメンバー分けしてやれ」

ミニバス経験者と未経験者が均等になるように組み分けしてもらった。
監督にポジションを決めてもらい、部活に入って初めての5対5のゲーム。
私のポジションはPG(ポイントガード)。
豹と一緒に試合出ていた時もポイントガードだったから、同じようにやればいいやと思っていたけど、パスが少しだけ速かったみたいで二年の先輩から注意された。

「………」

でも、別に速くないと思うんだけどな。
いや、豹や他のミニバスの子たちに合わせてたから、やっぱりちょっと速いのかな。
ゲームが終わって、コートの端で男子のゲームを眺めてた。

「君、ミョウジさんだっけ?」
「…あ、はい」
「パスが少し速いみたいだけど、ミニバスの頃からそのタイミングなんだね?」
「は、はい」

さっきまでパイプ椅子に座っていた監督が、知らないうちに私の隣に立っていた。(…全然気づかなかった)
君のミニバスチームの試合を見たことがあるんだけどね、と監督は続ける。

「スピード重視、走れるのが揃ってる」
「……えっと、あの」
「パスは確かに速いが、君はそのままでいい」

ひげ面の監督の手が、私の頭の上に置かれた。

「あの、でもそれじゃ、みんなパス取れないんじゃ…」
「はは、じゃあ単刀直入に言おう」
「……」
「君、二年チームに入りなさい」
「え!?」
「先輩だからと気を使う必要はない。 いいね?」

ピー!タイマーのブザーが鳴った。

「シノヅカ抜いて、ミョウジ入れるから」

二年チームとレギュラーメンバーがコートに並んだところで監督の声が響く。

「え…?」

シノヅカさんの顔が歪んだ。

「わかったか?」

強めに聞いた監督の言葉に、シノヅカさんは小さく返事をしてビブスを私に託した。

「あの、監督…私…」
「ポジションに捉われず、好きなようにやってみなさい」

えっと、その、先輩たちの顔が怖いです。