「仁王先輩って変わってますよねー。」






突然ぽつりと呟いた後輩に目を向ける。
後輩、赤也の視線の先には柳生をからかって遊んでいる仁王。



仁王はコート上の詐欺師だ。
人を食った様なプレイをしたり練習の時たまに柳生と入れ代わったりと人を欺くのに長けている。
たまに日常でも悪戯を仕掛けてきたりからかうような発言もする。



……確かにちょっと変わっているかもしれない。






「まぁそれがアイツのテニススタイルだし仕方ないんじゃね?」



「そっすよね!」



「……俺はたまに違う意味で仁王を変なヤツだと思う事があるけどな。」






同じく赤也の話しを聞いていたジャッカルが漏らした言葉に首を傾げる。






「はぁ?どういう事だよぃ?」



「いや…たまに仁王が妙に気弱な時がある気がしてな。」



「それは俺も前々から思っていた。」



「「「うおっ!?」」」



「や、柳かよぃ。急に話に入ってくんなよ…。」



「ビックリしたっす……。」



「すまない。」






一言謝罪を入れた柳は、何時もデータを取っている例のノートを開く。






「仁王は普段はマイペースで面倒臭さがりだが、一週間から二週間に一度のペースで部活の時に少し態度が臆病になっている日がある。次の日には戻っているがな。」



「へー…。」



「因みにその日の仁王の校庭や学校の周りのロードが完走仕切れない確率89%。柳生と入れ代わりテニスを行う確率42%。部活中に早退した数1回。真田から鉄拳を受けた数0回。」



「そんな事までデータ取ってんのかよぃ……。」



「流石というか何と言うか……。」






柳のデータ収集の広範囲さに呆れながらもう一度仁王に目をやる。
柳生の眼鏡を奪って逃げ回る仁王からは気弱さは一切感じられない。






「……気弱な仁王ねぇ…。」





【発見、否、未発見】






(仁王君!眼鏡を返したまえ!)(ピヨッ!)(……ま、いっか。)



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