「あれ?仁王えらく機嫌いいな。」



「そうか?」






自習が終わって仁王が教室に帰ると丸井が話し掛けてきた。
丸井はどうやら睡眠学習ならぬ睡眠自習をしていたようだ(額に机のアトがついている)。






「そういえばブンちゃん、芙蓉っちゅう生徒知っとるか?」






自分の席に着いたところでふと先程まで一緒に屋上にいた少女を思い出し、丸井に尋ねた。



途端に眉を潜める丸井。






「……仁王そいつに会ったのか?」



「……なんかあるんか?」



「いや…うちのクラスに一個だけ空席あるだろ?」






そういえばなかなか微妙な位置に誰も座らない机と椅子がある。
廊下側後ろから二番目。
席替えをしても必ずソコだけ席が変わらない。






「席はある。けど教室に来ない。誰も見たことがない。ソイツの名前が芙蓉っつーんだと。」



「ほー…。」



「ちゃんとクラス名簿にも名前がある。だけど1番最後に芙蓉って書いてあるだけで苗字も性別もわかんねぇ。」






まー女子っぽい名前だけどな。と話す丸井。



(ホンマに誰も苗字知らんのじゃな…。)



まさか同じクラスだったとは。
確かに一つだけ空いている席があるなとは思っていたが。






「でも仁王見たんだろぃ?どんな奴だった?」



「そうじゃの…。」






【詐欺師と天才】






(ナイショ、じゃ。)(なんだよそれ!)





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