「げ、」



『よぉ、銀髪。』






自習ですることがない仁王が屋上へサボりに行くと、昨日の不良少女がいた。



《安全第一》と書かれた工事中のフェンス(仁王が落とされた所だ)の前で胡座をかいて、携帯に何かを打ち込んでいる。
メールでもしているのだろうか。






「……銀髪じゃなか。仁王雅治ぜよ。」



『ふーん…、じゃあマサね。』






しかも昨日初めて会ったばかりなのにあだ名をつけられた。



(ちゅーかこいつ立海生やのに俺の事知らんのか?)



仁王は自分の顔が良いということに自覚はある。
流石にしょっちゅう女の子に騒がれていれば自覚もするというものだ。



しかも今年、自分の所属するテニス部は全国大会で準優勝している。
全国三連覇するかもしれないという事で夏中注目されていた上、テニス部のレギュラーは揃って顔が良い。
自惚れではなく、純粋に立海生で自分達を知らない者はいないと思っていた。






「……他人に名前聞いといて自分は名乗らんのか?」



『おっと、これは失礼。』






くすくすと笑う少女。
恐らくたいして失礼とも思って無いのだろう。






『芙蓉だよ。私の名前はね。』



「ほー…。つまり苗字を教える気は無いっちゅうことか?」



『学校にも知られてないからね。』






またニヤリ、と笑う。



食えない奴、と仁王は直感的に思った。
しかし同時に自分と似たようなタイプだとも思った。



ならばすることは一つだ。






「なぁ、芙蓉…じゃっけ?」



『何?』



「マサなんて馴れ馴れしい名前で呼ぶからには……これからよろしくさせて貰うぜよ?」






普段ならこんな自分から踏み込む様な事は絶対にしない。
だが彼女の友人になれれば、絶対に色々愉しくなる。


仁王の意外な台詞に、芙蓉は驚いた様に少し目を見開いた後、再びニヤリと笑った。






【詐欺師同盟】






(これからよろしく詐欺師さん)(こちらこそ同士さん)





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