「あ、仁王君!」
鈴の鳴るような甘い声にぞわり、と鳥肌が立つ。
後ろを振り向くとそこにいたのは可愛らしい少女。
転校生、城本姫梨。
昨日、仁王に屋上で告白した少女だ。
「昨日フラれた事は気にしてないよ。仁王君照れ屋さんだも、急に告白されたら拒否しちゃうよね。姫梨も仁王君の事だーい好きだよ!」
まるで、仁王が自分を愛しているのが絶対条件の様な台詞。
昨日と全く変わらない、自分が愛されて当然だという態度。
得体の知れない気持ち悪さが再び仁王を襲う。
「……コート内は部外者立入禁止じゃろ。出て行きんしゃい。」
「やだなぁ、ホントに仁王君ってば照れ屋なんだから。ううん、仁王君なんて他人行儀だから雅治って呼ぶね。精市がね、男子テニス部のマネージャーに推薦してくれたの!」
これからよろしくね!と笑う少女に眩暈がする。
幸村はテニス部の中でも1番ミーハーに敏感なはずだ。
明らかにミーハーな少女を推薦する事がまず可笑しいのだ。
「仁王、姫梨、部活始めるよ。」
「精市!」
「フフッ。今日も可愛いね。」
「あーっ!部長狡いっす!」
「そうだぜぃ幸村君!」
「い、色恋などたるんどる!!」
「動揺が隠せてませんよ真田君。」
部活をする、と言いながら部活そっちのけで城本姫梨を愛で続けるレギュラー達。
城本姫梨も当然の事の様にそれを受け入れる。
「あれ?蓮二は?」
「あぁ、柳君なら昨日から姉妹校へ代表生徒として交換留学していますよ。」
「ふーん、蓮二とも仲良くなりたいなぁ。」
キモチワルイ、
まるで、魔法で操られた王子様と王子様を操る魔女のようだった。
【詐欺師と魔女】
(魔法から逃れた詐欺師は思う。)(魔法を解くのは、一体誰?)
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