その後の試合も白熱したものだった。
大してゲーム差が開く事無くジリジリと試合が進んでいく。
と、跡部が連続でゲームを取り5ー3になる。
二人の試合に集中していると、不意に上から聞き覚えのある声が降ってきた。






「お、やってるな。」



『あれ?井上さん?』



「おっさん、部外者は立入禁止だぜ?」






近くにいたおかっぱの少年の台詞に、「おっと失礼」と言って自分の肩書の書かれた立入許可書を見せる。






「月刊プロテニス……マジかよ…!?」



「跡部君と忍足君が入学したと聞いて、早速取材に来たんだ。まぁ目当てはもう一人いるんだけど…今日は試合しないみたいだね就也君。」



『いいでしょう別に。ブランクが有るんで。』



「……あのっ!跡部と忍足って、一体何者なんですかっ!?」






井上さんと軽く会話をしていると(女なのにずっと君付けだけどまぁいっか)ポニーテールの少年が思い切ったように井上さんに尋ねた。






「跡部君はついこの間まで、ヨーロッパのJr.で活躍していたんだよ。一方の忍足君も、関西ではかなり名の知られた存在だよ。」





……ユーシってそんな凄いプレーヤーだったのか。
付け足す様に井上さんの言ったマイペースだから試合にあまり出ないって辺りはなんか親近感を感じるけど。






「ヨ、ヨーロッパで活躍……。」



「へぇー…。」



「そういえば、あんたは?忍足と仲良さ気だけど。」





ポニーテール君にあんたと言われて思わずムッとする。






『あんたって名前じゃないよ、俺は不二就也。ユーシとは今日偶然仲良くなったんだ。』



「就也くんもダブルスでは結構有名な選手だけど、あまり大会に出てくれないんだよね。」



『まぁ今年からシングルスに転向しますけどね。』



「だからブランクがどうのこうのって……。」






おかっぱ君が呟いた時、跡部君がスマッシュを打ったのが見えた。
が、何とそれをユーシは完全に無効化して相手のコートへ返してみせた。
俺はその技に見覚えが有りすぎる。






『羆落とし…?』






まさか周助以外に出来る人間がいたなんて。
天才、そんな単語が頭を過ぎる。



ゲームカウントが5ー4になり、跡部君の高笑いする声が聞こえた。
二人はお互いをみて認めたように笑い合う。



二人共に一歩も引かないままラリーが続く。
お互い挑発しながらも打ち合う姿はとても楽しそうだ。
と、跡部君が打ったボールが狙い澄ましたようにユーシのラケットのグリップに命中した。
ラケットを取り落としたユーシのコートへ向かってスマッシュが放たれる。






「破滅への……輪舞曲!」






跡部君の打ったボールが綺麗にユーシの横を抜ける。
ゲームカウントは6ー4。
跡部君の勝利だ。






「俺様の美技に酔いな。」


「……ふぅ…何時までも派手なやっちゃ。」






ユーシの呟きに思わず心の中で頷く。
周りの部員たちは試合のレベルの高さに沸く。





「俺っ…あいつらとならマジで全国狙えそうな気がして来たぜ!!」



「全国を…狙うだと?ちゃちな事言ってんじゃねぇ。」



「「「え?」」」






そんな彼らに跡部君は高々と宣言する。






「全国No.1の座を取るんだよ!!」






……あぁ、本当に面白い。
やっぱり氷帝に来て良かった。
跡部君がナルシストなのは置いといて。






「学年など関係ねぇ。今日から強い奴がレギュラーの完全実力主義だ。俺が、この氷帝テニス部を全国の頂点へと導いてやる!キングの座が欲しければ何時でも勝負しに来い。相手になってやるぜ。」






そう言って跡部君は幼稚舎(にしては大きな)少年を連れて帰って行った。



残された新入生トリオが笑い合う声を聞きながらユーシとコートを出る。
するとユーシが謙也かららしい着信に出るのが見えた。





「もしもし謙也か。前言撤回。どうやらこっちの生活は、まぁまぁどころか結構オモロそうやで。東京来て、良かったわ。」






そう言ってこっちに目をやり笑ったユーシに俺も自然と笑顔が零れた。







【王様の宣言と溢れる笑顔】






(実力主義か)(なら俺もキングの座狙ってみようかな)(なんてね)

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