「何か文句がある様じゃねぇか…そこの眼鏡と優男。」
優男……女なんだけどなぁ…まぁいっか。
顔を上げて跡部君と視線を交わらせる(睨み合うとも言う)。
近くで見るとなんて言うか威圧感が凄い。
伊達に王様(キング)を名乗ってる訳じゃなさそうだ。
「文句っちゅーか…俺も自分と試合してみたなっただけや。ええやろ?」
「構わねぇぜ。で、そっちの優男はやらねぇのか?」
もういいや、優男発言は無視しよう。
跡部君の方を向いてふわりと笑いながら口を開く。
『俺シングルスはブランク有るし…きっと俺とまで試合したら日が暮れる通り越して夜になっちゃうよ。』
「フン、えらい自信じゃねぇか。」
『後、俺ナルシスト苦手だから今後あんまり近寄らないでね?』
「「「ぶっ!」」」
ちょっと、ユーシ噴かないでよ。
こっちは真剣なんだから。
そっちのテニス部メンバーも笑うな。
ほら跡部君も青筋立てて…あ、これは俺のせいか。
『……とにかく俺はまた今度って事で。』
「ほ、ほなやろか。」
「……っち、ああ。」
二人がそれぞれコートに向かう。
ユーシはとりあえず動き易い様に上着を脱いでネクタイを解く。
っていうかいつの間にかギャラリー増えたなぁ。
ほとんど女の子だけど。
跡部様ーって声も結構聞こえる(跡部様って…いや突っ込むの止めとこう)。
不意に跡部君が右手を空へ向かって挙げたかと思えば、パチンッと指を鳴らす。
「勝者は俺だ!」
「「「キャー!!」」」
『……うわぁ…。』
「……派手好きなやっちゃな…。」
いやわざわざコートであんなこと言う跡部君も凄いけど、周りの歓声が半端ない。
何処ぞのアイドルか。
なんか耳が痛い。
「行くぜ!」
跡部君の強烈なサーブ。
そのボールはユーシが取る事はなく後ろへ飛んでいく。
ユーシがボールを取らないまま1ゲームが終了する。
「あっという間に跡部が1ゲーム先取か…。」
「手も足も出ないって感じだな…。」
呟くさっきの新入生コンビ(いや喋って無いけどもう一人居るからトリオか)の言葉を部長らしき先輩の「いや、それは違うな…。」という言葉が否定する。
「あの眼鏡の奴は着実にボールの軌道を捉らえていた。多分お手並みを拝見しているんだろう。」
へぇ、部長さん結構わかってるじゃないか。
コートに視線を戻すと、ユーシと跡部君がコートチェンジを済ませて構えていた。
ユーシがサーブを打ち、跡部君が危なげなく返す。
今度はボールにちゃんと追い付いている。
「いくら球のスピードが早うても、軌道が読めれば怖ないで!!」
「……それはどうかな?」
跡部君がニヤリと笑った瞬間、ユーシの目の前でバウンドしたボールは変な軌道を描いてユーシの後ろへと飛んでいく。
「軌道が変わった!?どういうことだよアレ!?」
「打つ時にボールに強力な回転をかけたんだ!!」
ユーシは直ぐに止まって方向転換し、ボールを追い掛ける。
「無理だって!あそこからじゃとても間に合わない!」
「……いや!」
『ギリギリ追い付く、かな。』
俺と隣のポニーテールの宣告通り追い付いたユーシが返球したボールはギリギリネットを越えて向こうのコートに入った。
「15ー0!」
「……ほぉ、あの距離を追い付くとはなぁ。なかなかやるじゃねーか。」
「……自分オモロいやっちゃなぁ。」
跡部君の台詞を聞いたユーシが汗を拭いながら言う。
こりゃ凄い対決だ。
「久々に燃えてきたわ。」
「フン…。そういやまだ名前を聞いてなかったな。」
「大阪から来た忍足ユーシや。覚えといて損はないと思うで。」
「忍足ユーシか……覚えておこう。」
【白熱の試合と傍観者】
(やっぱり面白い事になった)(こんなゾクゾクする試合久しぶりだ)(俺も何時か二人と試合したいかも)
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