先程目の前を走り抜けて行った集団を探して外を歩く。
すると少し離れて探していたユーシが手招きをするのが見えた。






『見付けた?』



「かもしれん。」






ユーシが案内したのは何処かの部室(……だよね?)の裏。
確かに微かに話し声や怒鳴り声が聞こえる(先輩に向かってとか謝れとか)。
少し高い場所にある窓が僅かに開いており、そこから音が漏れているらしい。






「……あんま聞こえへんなぁ『よっ…と!』って何してんねん。」






あまりに聞こえなくてイライラしたから(盗み聞きとか気にしない!)近くの塀へジャンプで手を掛けあっさりと登る。
丁度高さが窓と同じぐらいだから登って中から死角になってぎりぎり見えない位置まで近付く。






「……就也、自分身軽やなぁ。」



『?うん、身内では一番身軽かな?』



「いや…。(どう考えてもその身長で届く高さちゃうし。スカートやなくて良かったわ。)…まぁええか。何か聞こえるか?」



『んー…。』






ユーシに言われて窓に耳を寄せる。
意外と防音がしっかりしているのか少し聞き取りづらいけどさっきよりははっきり聞き取れる。






「アホだなぁお前らは。そうやって年が上というだけの先輩とやらに、一生頭を下げ続けるつもりかよ。」





……なんか凄い台詞が聞こえて来た。
これなんてナルシスト?
ナルシストは苦手だ。
なんか背筋が寒くなる。



どうやら中で誰かが彼の発言にキレているらしい。
怒号と制止の声が聞こえる。






「もう一度言う。一番強い奴がキングだ。つまり、テニス部もキングである俺様の物だ。異論のある奴は、今すぐここを出ていけ。」





おぉ、つまり暗に自分が一番強いと。
っていうかあの集団テニス部だったのか。
キング、という言い方に入学式で王様宣言をしたという少年と何となくイメージが重なる。
恐らくこの少年が件のあとべ?君だ。
この虚勢を張っている様には聞こえない大きな自信に満ちた声色からして本当に強いのだろう。
周助とどっちが強いかな。






「……わかった。しかし、我々はまだ君の入部を許可した訳ではない。これから入部テストを行い、その結果によっては君の言い分を考慮しよう。」



「フン……構わないぜ?」


「ただし、テストでは我が部のレギュラー全員と対戦してもらう。そこで一度でも負けたら、君の入部は認めない。」






なんて意地の悪いやり方。
多分何が何でも入部させないつもりなんだろう。
中で何人かのほくそ笑む声がする。
力付くで気に入らない反抗的な後輩を捩じ伏せようとするなんて、彼の力量も見極められていないくせに。






『(ただのナルシストかと思ったけど、まだちゃんと実力で見てる分あとべ君?の方が先輩方よりマシかな。)』



「我々がただ年が上というだけではないことを、思い知らせてあげるよ。」



「……フン。」






彼らが部室を出て行った後、塀の上から飛び降りてユーシに先程の会話を話す。






「ふーん…そらどっちもどっちやけど先輩方の方が性格悪いな。」



『だよね。……ねぇユーシ、試合見に行ってみる?』


「……せやな。」






【盗み聞き後行動開始】






(そういえばテニスコート何処に在るんだろう?)(……自分ちょっと抜けとるな。)(まぁ探せば見付かるよ。)



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