とりあえずレストランと見紛う様な食堂でユーシと昼食を取り(やっぱり三ツ星レストラン並に美味しかった)、今度は一般の授業棟を見て廻る事にした。



やはり流石私学というか中はとっても綺麗で、特別教室等も結構広かった。
図書館(これは室って広さじゃないよ!)を見付けた時はその新刊の入荷率と蔵書の多さにユーシと二人で通い詰めようと大騒ぎした。



一通り校内を見て見て廻った後、早くも部活動を行う新入生達を尻目に二人でベンチに座った。






『ユーシは確かテニス部入部だったよね?部活出なくていいの?』



「あー…別にええんとちゃう?」






マイペースなユーシに苦笑が漏れる。
お互いにテニスバックを持っていた為テニス部に入部するのはとっくにわかりきっている(ただ男子テニス部に入部すると言った時は流石に驚かれたけど)。






「まだ入学初日やし、就也も今日は行かへんのやろ?」



『うん、今日は見学だけしようかと思って。』






ならええやろ、とユーシが会話を打ち切った時、携帯電話の着信音が鳴り響いた。
どうやら音の発信源はユーシの携帯だった様で、着信画面をちらりと見た後迷うことなく電話に出る。






《もしもーし!》



「おぉ謙也か。」



《謙也か、ちゃうわアホ!画面見て分かるやろ!で、ちゃんと学校着いたんか?》



「ははは……電車間違えて遅刻してもたわ。」



《はぁ!?アホとちゃうか!?》



『……ねぇ、会話丸聞こえだよ。』






電話で会話し始めてからずっと思っていた事を言ってみるとユーシと電話相手(けんや?くん)が《「ホンマかいな!ハズっ!」》とシンクロした返事を返してくれた(流石関西人)。
その様子に思わず笑っているとユーシが「謙也が代われやて」と言って自分の携帯を俺に手渡す。






《おぉ、初めましてやな。俺はユーシの従兄弟の忍足謙也や。》



『ふふ、俺は不二就也だよ。よろしく謙也くん。』



《おん就也やな、よろしゅう。くんはいらんで。》






謙也はそう言ってケラケラと笑う。
ユーシとはまた違ってとても明るい少年だ。






《それにしても、ユーシに入学初日から彼女が出来るとはなぁ…。》



『はい?』



「ぶっ!?ちょ、謙也!?」






謙也の爆弾発言にユーシが咳き込む。
慌てたように携帯を俺の手から奪って否定する。






「ちゃうちゃうちゃう!就也はただの友達!何言うとるねん!」



《えー、つまらんわー。で、そっちの生活どうや?》


「あ、あぁ。美味しいタコ焼き屋さんは見付からんかったけど面白い友達も出来たし、まぁなんとか大丈夫そうや。」






相変わらず丸聞こえだけど気にせずに上を向いて空を眺めていると、バタバタとベンチの前を複数の生徒が駆けて行った。
そいつらは俺達等気にも止めずに何処かへ走っていく。






《ユーシ?急に黙ってどないしたんや?》



「いや、何でもないわ。あー…、ほんならまた。」



《おん、就也もまたなー!》






謙也が大きな声が聞こえた後ピッと携帯の通話を終了させる。



先程生徒達が駆けて行った方を見ながらどちらとも無く立ち上がる。






「……なんや?あの騒ぎは?」



『さー…?』






【回り始めた歯車】






(運動部っぽかったな)(追い掛けてみようか)(野次馬か)

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