召しませ | ナノ










気持ち中一と中二






画面に触れて文章を打つ。といっても相手は三国で、内容も部活のこと。ほんの数行内容を埋めて、送信部分に手をやった。
大して時間はかかっていないと思ったが、気付けば横にいる後輩が、じっとこちらを見つめている。

「えと、何」

「あ。…い、や」

携帯を置いて倉間の方に身体を向けた。勉強云々で相手を放置することはよくあるので今更放っておくななどと言われるとは思えないが、もしそうならば謝りたい。というか、わりといつも相手に甘えすぎていたんだと思う。

「何言っても怒らねぇし」

「あー、でも」

「いいから」

「…本当、どうでもいいことなんですけど、」

「うん」

少し言うのを躊躇する様子から、やっぱりそれ系か?と考えるも、それはあっさりと崩されることになる。

「南沢さん、指、めっちゃ綺麗だなって」

「…は、ぁ?」

膝の上に放置していた手を見ながら、言われた言葉は予想外。思わず反応を忘れそうになるも、少しテンションが高そうな相手はそんなことは気にしていないようだった。

「前から思ってたんですけど、すげぇ細くないですか?てか長い」

自分の腕を伸ばした相手は、そのまま掌を広げて言う。

「や、俺指とかそんな長くないんで、南沢さん流石だなって」

何が流石なのかいまいちわからない訳だが、言われてこちらも同じように腕を伸ばす。が、たいしてそんな風には思わない。

「…自分じゃよくわかんねぇんだけど」

「はぁ?それ嫌味に近いですって」

少し呆れ気味に聞こえた台詞のすぐ後。伸ばしていた腕を捕まれて、無理矢理掌同士が重ねられた。驚くこちらには目もくれず、ぐい、と近づけられた顔は重なる部分だけを写し出す。

「ほーら、うわ、まじでなげぇ」

若干嬉しそうに見えるのはこちらの気のせいなどではないと思う。重ねならがはしゃぐ相手は、年相応とでも言うのだろうか。純粋に笑って見せる表情に、思わずこちらの顔も綻ぶ。

「ほれ」

「お、わっ!」

重ねていた指同士を絡め合い逃がさないようにして、ぐいっと思いっきりこちらに引いた。

「何、するんですか!」

案の定頬を赤らめる相手が乗るのはこちらの身体の上になる。思った通りの反応に、嬉しくなるのは好きだからとでもいうのだろうか。空いている方の手でその後輩の頭を撫でれば、口から出ようとしていたらしい文句は引っ込み変わり、変わりにぐぅ、と口を閉ざす。

「おー、いい子いい子」

「ガキ扱いし過ぎだろ!」

自分でも全くそう思うわけだが、なかなか止められないものだ。クスクスと一通り笑った後、少し気になったことを口にした。

「なぁ、倉間」

「…なんですか」

「指、サイズ何号?」

「、はあ?」

いきなり何を、とでも言いたそうな相手に、まあそうなっても仕方がないよなとは思う。というか、逆だったら自分もそうなる。

「いきなりすぎですよ、まずサイズとか知りませんし」

「だよなー、俺も知らねぇもん」

「何それ意味わかんねー」

呆れを隠さずに見せてくる相手は少し笑顔になって笑う。それを愛しいと感じるし、馬鹿みたいだが手離したくないと心から思う。

「くーらま」

相手の頬に手を伸ばし、そっと触れて軽く撫でた。




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