30分 | ナノ










相手が不安がっているとか、疑ってるかもしれないとか、自分勝手な理由を作れば、多分こちらから行けるんだと思う。

「待たせてごめんツッキー!」

「いいよ、そこまで待ってない」

でもそれは結局、自分に勇気とか、そうゆうのがないだけで、それがわかるからそれさえもできなくて。

「ん、ごめん。どっかよる?」

「僕はいい、山口は?」

「あー、じゃあそのまま帰りますか」

部活の後だというのによくもまあそうやって笑えるな、と尊敬の念で思った。ニカッと効果音でも付きそうな笑顔は1つ上の小さい先輩を連想させる。

「さむっ!さっっむ!寒い!」

「言葉に出すから余計寒くなるんでしょ…」

口数は多くなる。少なくとも、二人きりになれば格段と相手は話すように。さっきみたいな笑顔だって、他の奴等にはなかなか見せない。

「え、ツッキーは寒くないの」

「そうはいってないけど」

だからといって、こちらが安心するわけじゃなく。むしろ、一方的すぎるのだ。

「マフラー持ってくればよかった」

あげていない、のに満足されて。こちらが満足するとでも思っているのだろうか。

「それ昨日も言ってた」

そうだっけ、とおどける相手がわからなかった。自分を好いていることも、好意も隠さずに見せているのに、どうしてこうも噛み合わない。

「…考えたって答えなんて出ないのに」

「へ、どしたの」

「山口」

所詮、原因は全部こちらにあるのだから。

「やっぱりコンビニよる」

「もう結構過ぎたよ?」

過ぎたから言ってるんだよ。

「引き返す。嫌だ?」

「まさか!寧ろ歓迎」

吐いた息は白く濁った。




∴極秘任務:延長時間30分








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テーマ「人外ファンタジー」
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