相手が不安がっているとか、疑ってるかもしれないとか、自分勝手な理由を作れば、多分こちらから行けるんだと思う。 「待たせてごめんツッキー!」 「いいよ、そこまで待ってない」 でもそれは結局、自分に勇気とか、そうゆうのがないだけで、それがわかるからそれさえもできなくて。 「ん、ごめん。どっかよる?」 「僕はいい、山口は?」 「あー、じゃあそのまま帰りますか」 部活の後だというのによくもまあそうやって笑えるな、と尊敬の念で思った。ニカッと効果音でも付きそうな笑顔は1つ上の小さい先輩を連想させる。 「さむっ!さっっむ!寒い!」 「言葉に出すから余計寒くなるんでしょ…」 口数は多くなる。少なくとも、二人きりになれば格段と相手は話すように。さっきみたいな笑顔だって、他の奴等にはなかなか見せない。 「え、ツッキーは寒くないの」 「そうはいってないけど」 だからといって、こちらが安心するわけじゃなく。むしろ、一方的すぎるのだ。 「マフラー持ってくればよかった」 あげていない、のに満足されて。こちらが満足するとでも思っているのだろうか。 「それ昨日も言ってた」 そうだっけ、とおどける相手がわからなかった。自分を好いていることも、好意も隠さずに見せているのに、どうしてこうも噛み合わない。 「…考えたって答えなんて出ないのに」 「へ、どしたの」 「山口」 所詮、原因は全部こちらにあるのだから。 「やっぱりコンビニよる」 「もう結構過ぎたよ?」 過ぎたから言ってるんだよ。 「引き返す。嫌だ?」 「まさか!寧ろ歓迎」 吐いた息は白く濁った。 ∴極秘任務:延長時間30分 |