苛つくか苛つかないかといえば前者。だけど、だからといって何か出来るわけではない。というか、自分だって何故ここまで気持ちにモヤがかかるような気分になるのかわからない。 「メアド?、あー、ごめん。あんまメール好きじゃないっぽいし」 放課後の教室。クラスの女子に声をかけられる山口と、若干の緊張を覗ける相手側。 「うん、一様渡してみるから、ごめん」 何やら小さなメモを渡し、お願いねっと念押しした女子は、どうやら此方には気付かなかったらしい。ばいばい、と小さく手をふるあいつもそうらしいけど。 「なんで謝ってんの」 「あ、ツッキー」 あ、じゃねーよ。ため息混じりに教室へ入り、山口の元へとゆっくりと歩み寄る。何度目だ、これで。間接的に寄せられる好意と、その橋渡しをする山口は、一度や二度のことではない。 「見てた?」 「ばっちりと」 ふぅ、と息を漏らすと腕を差し出されてへらっと微笑む相手。渡されたのは勿論先程のメモ。 「モテますなぁ」 完全に入り交じるのは冷やかしだ。そう、おかしいのだ。相手が嫉妬するならわかる。苛つくならわかる。 「…うざい」 受けとるメモを開くことはなく、力を入れてしまえばすぐによれるそれに寧ろ同情の気持ちが沸き上がる。 「なんで山口経由なわけ」 「そりゃあ、恥ずかしいからじゃないの?」 平気な顔をして答える相手に再び加算されていく不穏は喜ばしくない。 「だから、なんで謝ってんの」 謝っていた。しかも二度も。別に山口には関係無いことなのに。 「俺謝ってた?」 「誤魔化すな」 へらっと微笑む相手は、まるで平気みたいな顔をして淡々と返してくる。そりゃ、泣きそうな顔で言われても困るし不機嫌になられても面倒ではあるが。 「なんでいっつも平気そうなの」 毎度毎度女子と俺の橋渡しをして、平気な顔をして冷やかすことまでできるの。 とうとう口をつく抱いていた本音に、少し驚く素振りを見せる相手。 「僕が苛つかなきゃいけない訳がわからないんだけど」 「だってツッキー俺のだし」 ぐい、といきなり側に寄られて、驚き思わず一歩後方へ。ゆっくりと言われた台詞を噛み砕く。 「女の子には悪いけど、なんかあの子達には負ける気しない」 直接言う勇気もないなら尚更ね、と笑う相手が随分大人に見えてくる。 「それに、俺がツッキー取っててごめんねって」 「言ったわけ?」 「まさか、行動で示すだけ。罪滅ぼし的な感じでとりあえず橋渡しはしようかなと」 でもツッキーはあげれないけどね!明るく笑う相手はたくましい。が、1つ聞こえた不協和音。 「…罪、とか言うな」 「、え?」 「離れたら許さないから」 何故自分の側にいることを罪だと意識するのだ、こいつは。 「…了解」 離すつもりなどあるはずもないが。 ∴アリッシア、聞こえますか |