高一と高二 「あ、こら避けんな」 「避けますよ、身の危険を感じたんで」 邪魔なんであっちいってて下さい、と言い切る相手は全くつれない。悲しきかな、なれてしまった自分もいるが。触れることが出来なかった変わりに、すぐ近くのベンチに腰かけ観察を始めた。 割り当てられたロッカーから取り出したのは、中学の時とは異なりブレザー、だけど自分と同じ高校の制服。そして脱がれたユニフォーム。無意識に、頬が緩む。 「何避けられて笑ってんですか、引く」 「んなわけねーだろ、勝手に引くな」 こういう会話だって、もう一度出来る事が嬉しくて。何処かが温かくなって満たされるような、それこそ顔に出てしまうような。 「身長、また伸びただろ」 「あ、わかります?絶対抜いてやりますからねー!」 そんな変化にも気づける距離が、特別でないことの特別さ。不機嫌をすぐに直して笑う相手の声が、二人しかいない部室に響いた。 今でもたまに信じられなくなる。再び同じグラウンドで、しかも同じチームメイトとして、なんて、あまりにも出来すぎていて。だけどそれは現実で、今日だって鍵当番の相手を待ち、一緒に帰ることだって出来るのだ。先に着替えて待っていたこちらを見つけた時の、一瞬の嬉しそうな顔だって見逃すはずがない。 「隙あり」 「うわっ!」 ブレザーに袖を通したところを狙った。 「抜かせねーよ、俺だって伸びたし」 後ろから抱き込んですっぽりと収まる身体。頭1つ分はこちらが大きいだろうか、鎖骨辺りに顔を近づけ頬をぺろりと舐めてみた。まだ真新しい制服はサイズが少し大きいらしい。少しだけ丈の長い袖からのぞく指に、こちらの指をゆっくりと絡める。 「萌え袖的な?狙うなよ」 「はっ、なせ!」 面白いぐらいに肩をびくつかせる相手が可愛くて仕方がなく、少しヒートがかかってしまった。暴れられても厄介なので、そのまま後ろのベンチに座り、より密着する体勢。耳に顔を寄せて流し込む。 「好き、倉間、好き」 「っ、だ、からっ!」 「愛してる」 わざと出した少し低めの声。冗談でも何でもなく、総集するとその言葉になるのだ。通常よりも近い距離、位置的にダイレクトに鼓膜に響いたであろうその声は、相手の動きを停止させた。 「、倉間?」 顔を少し離して様子を見る。と、ゆっくりと振り向いた涙目の相手。自分の膝の上にいてもまだ同じにならない目線、つまり上目使いであるその表情に、一気にこちらが捕らえられる。 「さいっていだ、あんた」 「お、おい」 「こっちはあんたといれるだけでパンク寸前なんだよ気付けよ!」 おい待て、落ち着け、と宥めようにも止まらない勢いに飲み込まれる。 「これ以上、とか!どうしたらいいかわかんねーし、好きだし、なんか止まんなくなりそうだし、」 上までとめられていないボタンの隙間から覗く肌が殺人的だった。言葉の途中で正面へ顔を戻すも、頭の中に焼き付いた表情が簡単に消えるはずもなく。 「本当、勘弁しろ馬鹿!」 溢した台詞の後に、指に力を込めてくるのをこちらとしては勘弁してほしかった。 「く、らま?」 「…なんすか」 問い掛けに対する応答は無愛想。 「キス、したい」 「っあ、んた話きいて、」 感じたままを口にすると、思った通り反論が来る。だけどこちらだってそうなのだ。 「止めなくていいから」 絡めた指を離して前へと腕を回しこむ。今こちらを見られては厄介なので、なるべく強く力を込めた。 「つーか止めんな、もっと出せ」 こちらだって、我慢する気などないのだから。 「だって、本当止まんなくなって」 「全部貰うし、お前だって全部受けとれ」 「なっ!」 言い切ってから堪らなくなり、思わず相手をこちらへ向かせた。そこで気付くがもう遅い。 「あんただって、顔赤いじゃん」 「それほど本気だって捉えてろ」 きまらないな、と思いつつも、相手が少し安心したようなので良しとする。 「だから、させて?」 「だっ、あー、くっそ!」 ネクタイが引かれて部分が重なった。 「返したくなっても知りませんから!」 「返品不可?上等じゃん」 こちらがどれだけ飢えているか、甘く見すぎてもらっちゃ困るな。 ∴何色に例えようか |