※行為後




意識を飛ばして、気付いた時には相手の腕の中。感覚的に後処理は終了していると悟り、ほう、と溜め息をひとつ。僅かな音だったとは思うが、どうやら気付かれたらしい。

「…おきた?」

はい、と言おうとして喉の奥でつっかえる。あぁ、どうやらやらかしてしまったらしい。喉元に手をやって、意味もなくさする。これは少し厄介だ。

「喉、やったか。」

こくり、頷けば動く相手。もう一度抱え込まれ、覗きこむような、視線。軽く頭を撫でられ、触れるのは発達していない喉仏。見つめあったまま静止して数秒、ゆっくりと近づいてきた顔は、うなじあたりに埋められた。腕を、回される。

「ごめん」

か細い声で言われたのは謝罪。別にあんたのせいではないだろうと、どこか他人事のような気がして笑いが込み上げてくる。

くつくつと音をたて、肩を震わせる俺に相手が気づかないはずもなく。顔を上げた時の不機嫌そうな顔は、まるで拗ねる子供のようで。行為中の熱を宿した相手とは、まるで別人ではないかとまた可笑しくなった。

「何わらってんの」

首を左右にふってから、こちらも相手の首に腕を回す。方耳に口元を這わせてたてるのはリップ音と、少しの強がり。

「だいじょうぶですよ」

そんなにやわじゃありません。掠れる音を喉から漏らしてみたが、こんな声では説得力の欠片もないか。今さら気恥ずかしくなって、とりあえず相手のうなじに顔を埋める。先程の相手の行動。意外と、心地好いのだと知る。

「…生意気」

聞こえた声質は、驚くほど優しいもので。もう一度意識を飛ばす事にした。





∵音の出ないメガホン