芽生えた感情は消えることはない。無理矢理にでも押し殺すか、解決策を模索するか。
前者は大体失敗に終わる。短い人生経験上、今のところそう結論付けた。

決定的な台詞をいつからか聞くことはなくなった。好きだと伝えても微笑むだけ。触れる前の一瞬のびくつき。それでも離れて行くことはない、相手。
初めて芽生えたこの感情。前者は失敗、後者をしようにも少ないキャパシティではどうしようもできなかった。至る結論は、自分の望むものではない。
急速に広がる黒いそれに追い付かないのは自分の幼さからだど知ったところで、解決にはならないのだ。
沸点を、越えた。



告げた言葉など覚えていない。
ただただ頷く相手。代わらない表情。告げたのはこちらのはずなのに、まるで言われているような感覚。耐えられなかったのは紛れもない自分で、形を持ったそれが瞳から落ちてくる前に背中を向けて歩き出す。充分な距離が出来るころにはとっくに限界など越えていた。整理できない頭のなかで、一つ合点できたこと。

「随分と前から、片想いだったわけか」

叩き込まれた現実を飲み込むことしかできないのも、また現実なのだ。

もうすぐ1ヶ月が経過する。











思いを伝えられた時は驚いた。解決出来ないと思われていた感情は、相手によって表面化が可能なものとなった。
触れる、伝える、繋げる。非現実にいるようで、確かめるために相手に触れた。止まらない、本当に好きで、愛しくて。
しかし、ある時ふと思ってしまった。

なぜ、俺なのか。

一度思えばそれしか考えられなくなるもので。震え出す肩、過る不安。遊ばれているだけなのではないか、からかわれているだけなのではないか、自分だけ…なのではないか、否定できる要素は何一つなかった。目の前が、暗くなる。

ぎこちない空気、作り出しているのは紛れもない自分。相手に嫌われないように、ウザいと思われないように、飽きられないように。
好きだ―ねぇ、本当ですか?何処か?どうして?言えるはずもなく笑顔で微笑む、だけ。触れられそうな雰囲気、ヘマなどできないと強ばる体。それでも離れたくないと、思ってしまうのは自分の感情。それだけ好きなのだと自覚するのは容易だった。


告げられた言葉は覚えていない。ただ、意味だけを理解したあとは黙って頷くしかできなかった。ただただ相手の思うままに。最期まで印象の向上を図るのは、未練から。

こちらの方が、よっぽど現実らしかった。

離れて行く相手。遠ざかる距離。涙など、出るはずもない。

「はじめから、片想いだったんだろ」

非現実が終了してから、1ヶ月が過ぎようとしていた。






∵身勝手な合理化

続きました